半透明記録

もやもや日記

『巫女』

2005年03月15日 | 読書日記ーラーゲルクヴィスト
ラーゲルクヴィスト作 山下泰文訳(岩波文庫)



《あらすじ》

山のあばら家から
老いた目でデルフ
ォイを見下ろす一
人の巫女。苛酷な
運命に弄ばれ、さ
すらいながら神を
問いただす男にむ
かって巫女が物語
る数奇な身の上、神殿の謎、狂気の群衆、息子の正
体ーー神とはなにか、人間とはなにか。ノーベル文
学賞『バラバ』に次ぐスウェーデン文学の巨匠の、
悪と崇高と愛にささげた傑作小説。



《この一文》

” 道の曲がり角で、これを最後と下僕を、わしの友を、わしの幸せを願ってくれている唯一の男を目にしようと振り返った。するとそこに、神殿の階段に下僕も立って見送るようにこちらを見ておる。そこに箒を持って泣きながら立っておる。胸がきゅうと苦しくなり、わしも涙がこらえ切れなくなった。次の瞬間こちらからは姿が見えなくなって、急にまったくの独りぽっちになった気がした。      ”



何度読み返しても、その度に新しい感動をもたらしてくれる物語があります。
ラーゲルクヴィストの『バラバ』や『巫女』もそれにあたります。
どちらも3、4回は読み直していますが、その度に打ちのめされます。
200頁ほどの短い小説ではありながら、濃密な内容に圧倒されます。
信仰とは何か。
ラーゲルクヴィストはこの『巫女』において、宗教に対して人々がとる様々な態度を恐ろしく的確に表しています。
宗教に関わる人のどれほどが真に「神」を信じているのか。
人は何のために「神」を信じるのか。
「神」とは何か。
多くの疑問が投げかけられます。
主人公はいつもたまらなく孤独で、ひとりきりで疑問の中に投げ出されます。
私の目は涙で曇り、その姿を見失いそうになりながら必死で後を追いかけるのでした。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿