半透明記録

もやもや日記

『プリンス&プリンセス』

2006年08月22日 | 映像(アニメーション)
監督・脚本/ミシェル・オスロ

《内容》

プリンセスとダイアモンド/少年といちじく/魔女/泥棒と老婆/冷酷なプリンセス/プリンス&プリンセス



先日BS2にて放送されていたので、観てみました。監督のミシェル・オスロという人は『キリクと魔女』という映画も作ってます。そちらも以前から気にはなっているものの、まだ観てません。これを観て、ますます観たい気持ちが募りました。


さて、6つの物語は、美しく繊細に切り抜かれた影絵によって綴られています。その美しい画面からは目が離せません。おそらく関節単位で動かされているだろう人物たちは、平面的で、色もありません(影絵ですから)が、話す時に唇を滑らかに動かし、くり抜かれただけの目やしなやかな体の動きで彼らのこまかな表情までもあらわします。強烈に魅力的です。アニメーションの魅力というのは、現実世界が写真のようにそっくりそのまま再現されていなくとも、たとえば単純な面と線と色だけで、それによって観客の想像力はどこまでも膨らんでゆくという不思議さでしょうか。映像表現の奥深さを実感させられます。


物語のほうも、6つともとても面白いものばかりです。男の子と女の子が、謎の技師の部屋(劇場のようです)で、コンピュータから取り出した情報を謎のメカに入力すると、設定した時代や好みに合った衣装が用意されます。そうやって自分たちの望みどおりに扮装し、望みどおりの物語を作り上げてゆくという構成になっています。そのアイディアもいいですね。3話目を観終わったところで、「1分間 休憩します ご自由におはなしを」というメッセージが挟まれ、本当に1分間は何も始まらない。放送事故の時の「しばらくおまちください」を思い出しました。不思議な構成だなー。でも面白い。


私が特に気に入ったのは「魔女」。お姫さまと結婚するための条件として忌むべき魔女の城へと侵入し征服しなければならない王子たち。しかし、鉄壁の防御力を備えた魔女の城へは、王子たちがいかなる攻撃を仕掛けても入ることができません。そのうち、ある利口な王子がついにひらめきます……。という話なのですが、この結末がかなりトキメク! いやー、参りました。なんとロマンチックな。ほわー。これは素敵だ。あとでもう一回観ようっと。

「冷酷なプリンセス」も良かったです。いちおう近未来もの。冷酷なプリンセスは未来的にイカしたデザインの飛行船を操縦し、城に帰ったらレーダーで彼女に求婚してきた男たちを探知、抹殺します。怖ーい。でも格好いい。そして、この日もプリンセスに美しい「歌鳥」を捧げた若者が犠牲になるはず……だが。この物語の結末も素敵。ちょっと笑えるけど。

「泥棒と老婆」では舞台が日本です。《北斎》を使いたかったらしい。登場人物は王子と王女ではなく、おばあさんと泥棒。日本の町並みやBGMもどことなく中華風な気もしますが、背景に北斎の《赤富士》なんかを使ってあって、とても美しい。おばあさんのキャラがいい感じ。


そういうわけで、美しい影絵と、それにふさわしく美しい物語。最高のバランスでした。


ちなみに日本語吹替の女の子の声は、原田知世さんがなさっているそうです。道理で! 美しいと思った!! いいなあ、あの声。

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