半透明記録

もやもや日記

『退屈な話・六号病室』

2005年03月20日 | 読書日記ーロシア/ソヴィエト
チェーホフ作 湯浅芳子訳(岩波文庫)



《あらすじ》

短篇小説の世界的名手チェー
ホフ(1860-1904)の代表的2
篇を収める。世間的な名声を
博しながら自分では人生の意
味を発見できずに苦しむ「退
屈な話」の教授。懐疑におち
こんでは狂人と普通人との区
別がつかなくなる「六号病室」の医師など、いずれ
も救いなきインテリの苦悩を描くもので、いわば
作者による病めるロシアの臨床的診断書であろう。



《この一文》

”「かつては金だけを軽蔑した、ところが今は悪い感情を抱くのは金に対してではなく、まるで彼らに罪があるように金持に対してなんだ。かつては暴力と専横を憎んだが、今は暴力を用いる人びとを、罪があるのは彼らだけで、互いに育てあうことのできないわれわれみんなではないかのように、憎んでいる。これは何を意味するか? 新しい思考や新しい感情が信念の変化から生じたとしたならば、この変化はどこから突如現れえたのか? 果して世界はよりわるくなり、ぼくはよりよくなったのであろうか、それとも以前はぼくが盲で、無関心だったのだろうか? もしこの変化が肉体的な、また精神的な力の全般的な衰退から生じたのなら(わたしは病気で、毎日目方が減っているのだからね)わたしの状態はみじめなものだ。つまりわたしの新しい思考は異常で、不健康で、わたしはそれを恥じ、とるに足りないものとせねばならぬというわけだ・・・」
           ーー「退屈な話」より  ”





このところ私の読書が変わってきました。
いままでずっと本を読むことが好きで楽しいと思っていたのですが、物語の内容や文章の意味について少しでも理解しようと思うようになったのはほんの最近のことです。
この『退屈な話・六号病室』も、かつての私には本当に退屈な話でありまして、とても最後まで読むことができなかったのですが、つまり私は未熟過ぎました。
読者の力が足りなければ、物語のほうから受け入れてくれないとのだいうことが身に沁みました。
しかし、ロシアの文学には何かしら私を覚醒させるところがあったようです。
ザミャーチンの『われら』以来、何を読んでも面白くて仕方がないのでした。
そして、チェーホフはなるほど短篇小説の名手でありました。
これまで食わず(読まず)嫌いをしていて、すみませんでした。


さて、「退屈な話」「六号病室」の両者とも、読み終えるとひどく圧迫感を感じました。
様々のことに疑いを持つということには、どんな意味があるのでしょうか。
もしくは、そうやって懐疑に飲み込まれてゆく人を哀れんだり軽蔑したりすることには、どんな意味があるのでしょうか。
現段階で、私が思い付いたこととしては、生活する上でどちらが得か損かということであって、どちらが正しいとか正しくないということではないのではないかということです。
疑って悩み苦しむことは、日常生活や心の平静を脅かすかもしれませんが、人類が真実を見出すために必要であるからこそ備わっている能力なのだと、私は信じたいです。
それが否定され、拒絶されるとしたら、あまりにも悲しいと思うのですが。
ここまで考えてみたものの、物語の趣旨は正しく理解していないかもしれないという疑念がわいてきてしまいました。
もっと読解力を身につけなくてはなりません。
不安でたまりませんが、せっかく考えたことの記録として残しておくことにします。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
これは見えない次世代の悪意 (けんけん)
2011-07-09 00:58:11
この本は、集団ストーカーの生い立ちだと
僕は思います。自分の目の前に広がる
偽りで作られた幸せや正直さの事で異分子で排除された
才能ある方だと思われます。疑うのもよくないと
思いますが、真実には裏には裏があると思います。
正しい事は絶対ないと思うけど。答えが絶対これだー
と言ったらそれもないと思います。でも愛は
愛する行為は答えなのかなーと思う。。。
返信する
Unknown (ntmym)
2011-07-11 14:10:10
けんけんさん、コメントありがとうございます!
お返事遅れてゴメンナサイ!

>真実には裏には裏があると思います。正しい事は絶対ないと思うけど。答えが絶対これだーと言ったらそれもないと思います。


愛が答えかどうかは、愛がなにものであるか分からない私には考えようもないことですが、そうですね、私もけんけんさんが↑上でおっしゃっていることについては同感です。真実とか、正しいとかって、よく分からないですよね。だから同時に間違っているとか、正しくないということも、「絶対」ではないんじゃないかと思ったり(^_^)しかし、あ、暑い…頭が働かない……

返信する

コメントを投稿