半透明記録

もやもや日記

『西瓜糖の日々』

2005年02月20日 | 読書日記ー英米
リチャード・ブローティガン 藤本和子訳(河出文庫)


《あらすじ》

コミューン的な場所、アイデス
<iDeath>と、<忘れられた世
界>、そして私たちとおんなじ
言葉を話すことができる虎たち。
西瓜糖の甘くて残酷な世界が夢
見る幸福とは何だろうか・・・。
澄明で静かな西瓜糖世界の人々
の平和・愛・暴力・流血を描き、
現代社会をあざやかに映して若
者たちを熱狂させた詩的幻想小
説。



《この一文》

” 月曜日 赤い西瓜
  火曜日 黄金色の西瓜
  水曜日 灰色の西瓜
  木曜日 黒色の、無音の西瓜
  金曜日 白い西瓜
  土曜日 青い西瓜
  日曜日 褐色の西瓜

 きょうは灰色の西瓜の日だ。わたしは明日がいちばん好きだ。黒色の、無音の西瓜の日。その西瓜を切っても音がしない、食べると、とても甘い。
 そういう西瓜は音を立てないものを作るのにとてもいい。以前に、黒い、無音の西瓜で時計を作る男がいたが、かれの時計は音を立てなかった。       ”


「読書日記」をはじめてからずっと、この本を取り上げたかったのに、しばらく行方不明でした。
というのも、本棚は、ブラッドベリの『ウは宇宙船のウ』の隣に『小川未明童話集』その隣に
『中国の故事・ことわざ』という無法地帯。夏目漱石の『夢十夜』も消えた。
久しぶりに「第一夜」が読みたい。
関連性から考えると、私のお宝『内田百間集成』のコーナー(これだけはまとめてある)にまぎれていそうと考えて、捜索(まとめて押し込んであるだけなので)を開始しました。
本屋さんでかけてくれるカバーがついているのとついていないのが混ざっているので、カバーつきの中身を透視していると、何故か『西瓜糖の日々』の背表紙が透けて見えました。
「こ、こんなところにあった! めでたい! しかし何故?」
諦めてもう一冊買うところでした。良かった。
(『夢十夜』は結局見つからなかった・・・)

さて、物語ははじめから終わりまで極めて静かに展開していきます。
この淡々とした感じは、ひょっとしたら村上春樹と通じるかもしれないと思い付きましたが、私は『ノルウェーの森』しか読んだことがないので、今度村上通の人に聞いてみたいです。
どのへんが特にどうとはっきり言えないのですが、私はとても感銘を受けてしまいました。
和訳の「西瓜糖」という響きも美しいです。
ほかに『東京日記』という詩集もあって、少し前に書店で立ち読みしたところ、詩のひとつひとつに日付けがふってあって、それがちょうど私が存在を始めようとしていた年のようでした。
とは言え当時、私は生れてもいなければ、東京とも何の関わりもありませんでしたが。
ともかく、そんな訳のわかるようなわからないような理由で、私はブローティガンに対して何か特別なつながりを感じています。
勝手に。
物語と出会って起こるこういう片思いというのは、片思いで当たり前とは分かっていますが、今日は何故だか不思議に思えます。

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