半透明記録

もやもや日記

『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』

2014年01月28日 | 読書日記ー英米

ブラックウッド 南條竹則訳(光文社古典新訳文庫)


《内容》
芥川龍之介、江戸川乱歩が絶賛したイギリスを代表する怪奇小説作家の傑作短篇集。古典的幽霊譚「空家」「約束」、吸血鬼と千里眼がモチーフの「転移」、美しい妖精話「小鬼のコレクション」、詩的幻想の結晶「野火」ほか、名高い主人公ジム・ショートハウス物を全篇収める。

《収録作品》
 「空家」
 「壁に耳あり」
 「スミス――下宿屋の出来事」
 「約束」
 「秘書綺譚」
 「窃盗の意図をもって」
 「炎の舌」
 「小鬼のコレクション」
 「野火」
 「スミスの滅亡」
 「転移」


《この一文》
“「……そして恐怖――恐怖だ……思うに、恐怖による死、あるいは恐怖による発狂こそ、人間が知り得るもっともおそろしい感覚のすべてを、一瞬のうちに総和するものだろうね」”
  「窃盗の意図をもって」より


ブラックウッドはたぶんこれまでにもどこかで読んだことがあると思いますが、この傑作集を読むまでは、この人であるとはっきり認識したことはありませんでした。だが、これは面白かった。

私は怪奇ものの漫画は苦手ですが(絵があると怖いから)、怪奇小説は結構好きです。でも小説でもあんまり怖いのはいけません。怖くて眠れなくなってしまいます。ホフマンの「砂男」とか「廃屋」とかは怖かったなー。好きだけど。

このブラックウッドの一冊はその点ちょうどいいくらいの怖さです。「空家」はちょっと怖いところがありましたが、ギリギリ怖いもの見たさを楽しめる程度の怖さにおさまっています。いいよ、いいよ!

私はこの中では表題作の「秘書綺譚」が一番好きですね。幽霊も人知の及ばぬ存在も恐ろしいけれど、生きた人間が不気味な時も恐ろしいものです。「秘書綺譚」では、はじめはとても人柄の良さそうに思えた人物が次第に豹変していく様がギラギラと描かれていて大変面白かったです。不気味で恐ろしいのですが、ところどころ間が抜けているのが最高。うーん、面白かった。


その他の作品も、それぞれに違った感触を味わえて盛りだくさんな感じです。ブラックウッドは多作の人であったそうなので、今後もちょくちょく読んでみたいと思います。







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