半透明記録

もやもや日記

『木曜日だった男 一つの悪夢』

2014年04月15日 | 読書日記ー英米

チェスタトン 南條竹則訳(光文社古典新訳文庫)


《あらすじ》
この世の終わりが来たようなある奇妙な夕焼けの晩、十九世紀ロンドンの一画サフラン・パークに、一人の詩人が姿をあらわした。それは、幾重にも張りめぐらされた陰謀、壮大な冒険活劇の始まりだった。日曜日から土曜日まで、七曜を名乗る男たちが巣くう秘密結社とは。

《この一文》
“彼はそう言って、左右に広がった無数の人の群れを満足げに見やった。「俗衆はけして狂わない。僕も俗人だから知っているのさ。これから陸に上がって、ここにいるみんなのために乾杯しよう」”




ずっとずっと前から読んでみたくてしょうがなかった本書をとうとう読みました。日曜日から土曜日までの七曜を名乗る男たちが巣くう秘密結社、陰謀、冒険活劇…とくれば読まない訳にはいかないじゃないですか。なんて面白そうなんだ。秘密結社! 秘密結社!! 素敵だ!

というわけで、わくわくしながら読んでみた『木曜日だった男』。諸事情により一息に読んでしまうことはできず2週間かけてじりじりと10行ほどずつ読んでは中断というような超低速度読書を余儀なくされましたが、物語の方は常に飛ぶような勢いで進んで行きました。これは予想していた以上に面白い作品でした。あらすじを見た段階ではなにかスリルとサスペンスな作品なのかと思っていましたが、それだけではなくもう冒頭からすでにかなり幻想的で象徴にあふれた物語でもあるらしいことが分かります。あわわ、いかにも私の好きそうなお話じゃないか。

詩人のガブリエル・サイムはふとしたことから無政府主義者の集会に同席することとなったばかりか、その中枢メンバーである「木曜日」に選出されてしまう。そこから始まる彼の奇妙で、恐ろしく、そして輝かしい冒険の物語。

しばらく読むと、その先の展開はだいたい予想がつきます。ネタバレをするとつまらないので書きませんが、ここで描かれている対立する二つの勢力がどういうものなにかについて読んでいれば見当がつき、そしてまあその予想通りになるのです。問題は、予想通りだったということがつまりどういうことなのかということですね。光と影、正面と後ろ、仮面とその下の素顔。この世界の物事に対する評価や価値観がぐるぐると転倒するようです。こういうところが私にはとても面白かった。けれども、つまりどういうことであったのかというと、私にはまだよくわかりません。でも猛烈に面白かった。それだけは確かです。


私に考える力がないのが残念です。よく読んで、深く考えたらきっともっと面白くなるだろうになあ。まあしかし、とりあえず念願の一冊を読むことができただけでもよかった。何も考えずただ読むだけでもとても面白いお話でした。また読みたい。








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