半透明記録

もやもや日記

『一人の男が飛行機から飛び降りる』

2005年01月30日 | 読書日記ー英米
バリー・ユアグロー 柴田元幸訳(新潮文庫)


《あらすじ》

一人の男が飛行機から飛び降りる。
涙を流しながら、靴箱いっぱいのラ
ブレターを空中に投げ捨て・・・/魚
を先祖にもつ女の逸話/世界で最後
の煙草を持った男が、ブロンド女か
らマッチを手に入れようと苦労した
物語/サルタンのハーレムを警備し
ていた私が、テントの中を覗き込ん
で見たものとは・・・などなど、あな
たが昨夜見たかもしれない、リアル
でたのしい悪夢、149本の超短編。


《この一文》

” その晩、私は眠れぬまま横になり、耳を澄ます。彼女の泣き声が聞こえる。私はベッドを離れて、ドアのところまで行って立ちどまる。それから暗い廊下に出て、彼女の部屋の前まで行く。ふたたび耳を澄ます。そしてそっとドアの把手を回してみる。
  彼女は青いトランクの前にひざまずいている。トランクの蓋は開いている。彼女は裸足で、白いナイトガウンを着ている。私が名前を呼ぶと、彼女はふり向く。月光を浴びた彼女の顔に涙が流れ落ちる。私には彼女がたまらなく美しく思える。「君、大丈夫?」と私はささやく。彼女は私を見て、こっくりうなずき、優しい声で「花に水をやっているだけ」と言う。    
      --「庭」より     ”



本当に短い物語ばかりで読みやすいです。
こういう夢のような物語は楽しいです。
沢山あってすぐに忘れてしまうので、何度でも繰り返し楽しめそうです。
その中で、忘れられない程素敵だったのが、引用した「庭」。
とても美しいです。
たまにこのように美しい物語がまじっているので、探すと面白いかもしれません。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (joy)
2005-03-04 14:19:30
はじめまして。

勝手にTBさせていただきました。

ユアグローの短編、不思議な味わいですね。
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はじめまして! (ntmym)
2005-03-04 16:06:30
TBありがとうございます。



私は、夏目漱石『夢十夜』や内田百間『冥途』のような、

「こんな夢を見た」という感じの話が好きなのですが、

ユアグローの物語にはまた独特の雰囲気がありますね。

なんというか生々しいというか。

性的な表現が多いからなのでしょうか。

でも、それほどいやらしくもないところが気に入っています。
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