ケーブルテレビで、名探偵ポワロのドラマ制作の舞台裏を特集した宣伝番組をやっていました。私はこのデヴィッド・スーシェ氏演じるポワロのシリーズが大好きなので、たまたま番組が始まるところに偶然居合わせただけだったのですが、そのまま最後まで見ました。いや凄い。面白かったです。
『名探偵ポワロ』をご覧になった方ならお分かりかと思いますが、このドラマシリーズはとにかく作り込みが凄い。綿密な設定、小道具や舞台装置のリアルな高級感、一流の俳優たちによる一流の演技。ドラマを見ているだけでもそれは明らかに伝わってくるのですが、この番組ではそれを制作現場の裏側を見せることでさらに詳しく説明してくれます。いや、凄いなー。長編ドラマ1本を撮影するのに5ヶ月とか! しかもそれが海外ロケとか! ほとんど映画並みですね。
私が特に感激したのは、俳優たちが彼らの演技について常に深く考察していることが随所で示されたことでしょうか。面白かったのは、自分に割り当てられた役を「過剰にならないように」演じたいと言っていた役者さんがいたことですね。その人はイギリスでは有名な喜劇俳優なんだそうですが、フランス人警部のフランス語なまりの英語をいかにしてうまく、馬鹿げて見えないように話すかで悩んだようでした。
またポワロ役のスーシェさんはポワロ役の役者としては史上最高の適役として有名ですが、この人の演技とそれに向かう情熱的な姿勢はたしかに凄いです。普段のスーシェさんの地声はどっしりしたごく低い音なのですが、ポワロを演じる時にはかなり高くなるように意識しているらしい。そ、そうだったのか!
もっとも私は普段は吹き替えでこのドラマを見ていて、日本語版のポワロ役は熊倉一雄さんが演じてらっしゃるのですが、熊倉さんの声質とスーシェさん演じるポワロの声質があまりに似ているので、今更ながら盛大に驚きました。まったく違和感なし! これは凄い一致! 特に挨拶の部分とかほぼ本人! 凄いな~。
それからポワロ的な歩き方とか、女性が席を立つ時は自分も必ず立つこととか。細部へのこだわりが凄い。リハーサル用にポワロの代役がいる(専門)ことにも驚きましたね。高級衣装が傷まないように、休憩中も座れないとか。なにもかもが凄いことになっていました。
とにかく、俳優さんたちとスタッフのドラマに対する強い意気込みのようなものには私は大変に感動いたしました。それは面白くなって当然ですよね。うん、うん。
大袈裟過ぎるだろう、という面白さも私は好きですが、このドラマシリーズはそういうのは目指していないんですよね。しかし、このように徹底的に計算され、抑制されつつも、見ている者にはただただ洗練され豪華絢爛でスリリングな世界が繰り広げられているようにしか見えないところが素晴らしいといえましょう。ぜひともがんばって全作品をドラマ化してもらいたいものです。
あー、そろそろまたポワロを見直す時期がやってきたかな。と、半年おきに見直す私…どれだけ見れば気が済むのか………いえ、済みません!