半透明記録

もやもや日記

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『収容所惑星』

2005年04月02日 | 読書日記ーストルガツキイ
アルカジイ&ボリス・ストルガツキー 深見 弾訳(海外SFノヴェルズ 早川書房)




《あらすじ》

二十歳になってもなんの能力もなく、自分の将来さえ決めることも出来ずに、宇宙に対するあこがれだけは人一倍のマクシム。彼は自由調査集団に入り、地球をあとにしたが、隕石事故に遭い未知の惑星に不時着する。そこは、河は放射能に汚染され、大地は荒廃し、住民たちは〈紅蓮創造者集団〉と称する謎の権力者たちに支配された世界だった。
社会体制とのコンタクトを中心テーマにして現代社会の歪みを鋭く風刺した問題作!



《この一文》

”「・・・それからもうひとつ覚えておかれるよう忠告します。
  つまり、あなたがたの世界ではどうなっているか知りませ
  んが、われわれの世界では、主人がいなければいかなる勢
  力といえども長くは存続しません。常に、それを手なずけ
  従わせようとする者がだれか要るのです。こっそりとかあ
  るいは立派な口実をつくってですが・・・わたしが申しあげ
  たかったことはこれで全部です」
  〈妖術使い〉は見かけによらず身がるに立ち上りーー鳥が
  肩の上でしゃがみこみ、羽根をひろげたーー壁ぞいに短い
  足を滑らし、ドアの外へ姿を消した。         ”




ストルガツキイの作品が多くなってきたので、カテゴリーを分けました。
お祭りも盛り上がっていることですし!

さて、私がこれまで読んで立ち直れなくなりそうになった小説は、ガルシア=マルケス『十二の遍歴の物語』の中の「雪の上に落ちたお前の血の跡」、アストゥリアス『大統領閣下』、そしてこの『収容所惑星』です。
『収容所惑星』は、前に読んだ『地獄から来た青年』と同じ世界を舞台としたシリーズのひとつということです。
なるほど、確かにそうでした。
『地獄から来た青年』のほうは、物語が短いせいもあり、割とあっさり読めたのですが、こちらはそうはいきませんでした。
まず分量が違います。
第一部だけ読んであったのですが、第二部から第五部までは一気に読みました。
途中で目を離したら、もう再び戻ることができないような気がして、お茶を飲むこともできずに必死で読みました。
というのも、大変に重いのです。
ストルガツキイのテーマはいつも重いのですが、今回は象徴や幻想性が少ないせいか、とても直接的に衝撃を受けてしまいます。
気が付いたら5時間経過していました。
読み終えた後で、さらに1時間も放心してしまいました。
物語の中では、ほとんど無意味な戦いのために絶望しながら人間が死んでいきます。
哀れで仕方がありません。
しかし、悲しいことには、それがただお話の中だけのことではなくて、私たちのこの世界においても十分起こりうるし、現在も起きているだろうということです。
主人公のマクシムは、そういう世界を受け入れることができず、自分が変えてやろう、と手を尽くしますが、なかなかうまくいきません。
世の中を変えようと思っても、情熱だけでは不足なのでした。

この作品は1967-68年に書かれたようですが、十分に今日性があると言えるでしょう。
上に引用した部分を読んで、私はこの世界のある国を連想してしまいました。
他の部分では、他の国を思い起こさせます。
〈妖術使い〉のせりふには次のようなものもありました。

”「ーーーしかし、秩序というものにはそれな
  りに法則があります。それらの法則は大きな人間集団の渇
  望から生れたものであって、その渇望が変化してはじめて
  法則も変りうるのですーー」             ”

難しいです、しかしせめて考えるくらいはしなくてはなりません。