安部公房 (新潮文庫)
《あらすじ》
現在にとって未来とは何か? 文明
の行きつく先にあらわれる未来は天
国か地獄か? 万能の電子頭脳に平
凡な中年男の未来を予言させようと
したことに端を発して事態は急転直
下、つぎつぎと意外な方向へ展開し
てゆき、やがて機械は人類の苛酷な
未来を語りだすのであった・・・。薔
薇色の未来を妄信して現在に安住し
ているものを痛烈に告発し、衝撃へ
と投げやる異色のSF長篇。
《この一文》
” 予言機械をもつことで、世界はますます連続的に、ちょうど鉱物の結晶のように静かで透明なものになると思いこんでいたのに、それはどうやら私の愚かさであったらしい。知るという言葉の正しい意味は、秩序や法則を見ることなどではなしに、むしろ混沌を見ることだったのだろうか・・・・? ”
難しいです・・・。
とても興味をひかれたし、何かについて考えなければならないことは分かっているのに、それが何だか分かりません。
未来と現在の「断絶」、「日常的連続感の枠内での主観的判断の氾濫」・・・。
当分頭の整理がつきそうにありませんので、考え続けることにします。
安部公房の作品においてなされる問題提起には、我々がその問題を決して避けて通れないのだという切迫感を感じてしまいます。
普段は気がつかないふりをしている問題にふいに直面されられてしまいます。
この人の持ち出すテーマの難しさとは裏腹に、物語自体の読みやすさ、文章の明確さのために、私は途中で読むのをやめることができません。
きっと他の作品も読むことになるに違いないのでした。