雑誌の付録、昔は番外編

　 書店に出向くと、ポーチや模型などの付録が付いた雑誌が平積みになっているのを見かける。
　　出版不況と言われ雑誌全体の発行部数が減少するなか、付録付きの割合は２０００年以降
　　上昇傾向にある。　雑誌の付録は明治時代から発展してきたが、その源流をたどると意外
　　な媒体が浮かび上がってきた。　付録付きの雑誌の割合が高まった背景には、バブル崩壊
　　後の１９９５年をピークに雑誌の発行部数がマイナスに転じ、業界に広がった危機感がある。

　　それまで日本雑誌協会は自主基準として「雑誌作成上の留意事項」を設けていた。　これ
　　　は全国の書店に雑誌をスムーズに配送できるよう、付録の大きさや重量、使える素材を
　　　規定したものだ。　だが少しでも購読者を増やそうと雑誌業界から基準の緩和を求める
　　　声が出始め、０１年には付録の重量や寸法といった規定を削除する大幅な改訂をした。
　これを受けて付録付き雑誌が増加。特に女性ファッ
　ション誌に添えられるブランドのロゴを入れたバッ
　グやポーチなどの付録は社会的ブームとなった。　
　第１陣として０２年にポーチなどの付録をつけ始め
　た宝島社の『sWeet』の発行部数は急伸。他社も追
　随し、「付録戦争」といわれる状態に突入した。
　『sWeet』は１０年２月号の発行部数が１００万部
　を突破した。　１９９９年から昨年まで同誌編集長
　を務めた"渡辺さん"は「創刊当初、『sWeet』はびっ
　くりするぐらい売れておらず、休刊の危機だった」
　と振り返る。　読者に雑誌を手に取ってもらうには
　どうしたらいいか考えた末に、子ども時代の記憶が
　よみがえったという。「紙でできたはんこや組み立
　てカメラなど、付録付きの雑誌を買うのがすごく好
　きだった。女性ファッション誌にはなかったので、
　こういうのをつけたら読者も驚くのではと思った」
　渡辺さんが幼少期の１９７０年代には、小学館の学
　年誌や講談社の「なかよし」などの少年少女雑誌に
　付録が付いていた。
　　弥生美術館（東京・文京）学芸員の”中村さん”は「１９２０年から３０年代にかけて、現在
　　　につながる雑誌付録の基礎が築かれた」という。　この時期には様々な子ども向け雑
　　　誌で付録をつける動きがみられた。　中でも１９２１年、月刊誌の「少年俱楽部」編
　　　集長に就任した"加藤さん"が子ども向け付録の考案に積極的で、船や飛行機、建築物
　　　など大型の組み立て模型を次々考案した。

　　付録といえば簡易的な紙おもちゃが主流だった当時、リアルで作るのが楽しい付録が他
　　　誌にも刺激を与え、「子ども向け雑誌全般の付録の発展につながった」と中村さんは
　　　分析する。　だが当時より前に、雑誌に付録が付くことがあったようだ。
　　中村さんが調査した中で最も古い事例は、明治中期の雑誌『穎才新誌』だと言う。　こ
　　　れは１８７７年に創刊された青少年の投稿雑誌で、本誌に収まりきらなかった読み物
　　　を付録と称して特集していた。　当時、他の雑誌でも読者からの投稿コーナーや大型
　　　のイラスト、小説などを「付録」として収録していた。　このように、初期の雑誌で
　　　付録は「付随して収録された番外編」という意味合いで使われていて、おもちゃやグ
　　　ッズといった今日的な付録とは異なる内容だったという。

　　「番外編」という性格を帯びた付録は、雑誌に限らない。　その一つが新聞です。
　　　ニュースパーク（日本新聞博物館、横浜市）学芸員の“工藤さん”は「明治１桁（1868年~1876年）
　　　ぐらいの新聞では、号外を付録と呼んでいたものもある」と話す。
　　確かに７６年３月２日の東京日日新聞（現・毎日新聞）では、朝鮮で起きた江華島事件の号
　　　外を付録として配っている。　工藤さんは「戦争中には戦地の地図をつけることで販
　　　売促進効果があった」とも指摘。　このほかカレンダーやイラストなど、読者が楽し
　　　める付録を元旦号に記念として添える動きも明治１０年代には見られたという。

　　このような新聞の付録が雑誌にも影響を与えたのかどうかは定かではないが、販促効果
　　　を狙った「おまけ」をつける動きは、雑誌よりも一足先に新聞が取り入れていたとみ
　　　られる。　源流をたどると「付録」の意味合いは現在とは異なっていた。　今では雑
　　　誌の付録は、読者の興味を引こうと販促競争の中で毎回異なる限定品が投じられてい
　　　る。　そこには昔と変わらぬ編集者の様々な工夫が詰まっているようですな‥。
　　　最近、雑誌を買って読むことはほぼないので付録については詳しくは分かりません。