裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

ボランティアレポート・千葉、鋸南町1

2019年09月26日 20時18分16秒 | 被災地ルポルタージュ
もはや趣味と言っていい感のある、災害ボランティア活動。
今回は、先日の首都圏直撃台風で大規模に被災した千葉に、緊急出動。
中でも、猛烈な強風で荒らされた君津と鋸南地区で働いてきた。
もちろん、こっそりとひとり行。
その模様をルポルタージュする。
さて、あらかじめ君津に宿を取り、新宿から内房線に乗って、現場に直行したのだった。
「ボランティア募集!ただし千葉県内在住者限定」というわけのわからない縛りがあるが、バカな行政の言うことなど聞く耳を持つ必要はない。
これまでの経験から、いけばなんとでもなるし。
つわけで、とにかく動くのだった。
初日は、いちばん手ひどく屋根を引っぱがされたと報道にのってる鋸南(きょなん)町がターゲット。
列車の車掌さんから被災情報を仕入れ、言われるままに、保田という特急の停まる駅で降りてみる。
毎度のことだが、こうした場所には人っ子ひとりいない。
そこで、道ゆく自衛隊員をつかまえ、さらなる情報収集を試みる。
ところがなんと、「ボランティアセンターは、ここからだと車でもだいぶかかる」らしい。
われわれ個人ボランティアは、ボラセンを通して仕事を獲得せねばならんのだ。
その手続きを経なければ、ボラ保険が効力を失うし(死亡時2000万円)、だいいち単独行動だと、詐欺か盗っ人かと怪しまれる。
かと言って、ボラセン方面に向かう電車は、一時間半に一本あるきり。
屋根にブルーシートを張るために出張ってきてる自衛隊(ひっきりなしに通りかかる)にヒッチハイクを頼むわけにもいかず、途方に暮れ、呆然とたたずむ。
と、そこへひとりのお母ちゃんが、やはり途方に暮れたように肩を落として歩いてきた。
訳を聞くと、「家が片づかん」のだという。
台風で屋根瓦を飛ばされ、びしょびしょの家の中をなんとかしたいのだが、駆けつけてくれた姪っ子と甥っ子だけでは手に負えないらしい。
待ってましたとばかりに、助太刀を申し出た。
闇営業は保険も利かないし、詐欺や盗っ人を疑われるかもしれないが、ここはやむを得まい。
しかし、そこは疑うことを知らない田舎のひとだ。
ありがとうありがとうと、手を引っ張られる。
連れていかれたのは、駅からすぐの大層な屋敷。
しかし、瓦が周辺に無残に散らかり、屋根にも窓にも、応急処置のブルーシートが張られている。
時あたかも、次なる台風の接近によって、ブルーシートまでめくりあげそうな強風が吹き荒れている。
作業を急がねばならない。
クツのまま上がっていいと言われ、長靴履きでお邪魔した家屋内は、凄絶な散乱っぷり。
ピアノ、桐ダンス、テーブル・・・部屋のあちこちにブルーシートが張りめぐらされ、雨露をしのいでいるが、畳はすでにぐしょぐしょだ。
こいつを剥がして、集積所まで運びたいのだという。
そこで、高校生のような甥っ子と姪っ子に指示を出し、まずはサイドボードやら飾り棚やら衣装タンスやらを畳の上からどかして、濡れ畳を引っぱがしにかかる。
じゅくじゅくに濡れそぼった畳の重さを知っとる?
津波で海水に浸かった石巻の畳は、六〜八人がかりでかつぎ上げ、やっと運び出せるくらいの重さだった。
だけどここのは、雨漏りがじわじわと染みたやつなんで、わりと無理なく持ち上がる。
若人たちと力を合わせて、もう使い物にならない10枚ばかりを、次々にめくっては運び出した。
それにしても、津波は下からの一瞬の水でやられてどうしようもないが、雨漏りってのもいつまでもいつまでもポツリポツリと攻め立ててきて、そのストレスときたら半端ないらしい。
湿気た畳は腐って臭いを放ちはじめるし、とにかく、一刻も早くなんとかせねばならんのだ。
つわけで、午前中いっぱいかけて、こちらの片づけをした。
「助かった、もう大丈夫」と言うので、心痛むが、家を後にする。
それでも、なかなかの仕事量をこなしたぞ。
さて、ここからボラセンまでの足をどうするか・・・考えあぐねる。
もう仕事を切り上げて飲んじゃおうかな・・・とくじけはじめた、しかしまさにそのときだ。
一台のバスが、目の前を通りかかるではないか。
あわてて飛びつくと、「ボラセンのある市役所方面までいきますよ」という。
なんということだろう。
一日に五本きりしか走っていないバスに、たまたま遭遇したのだった。
すぐさま乗り込み、運賃は?と訊くと、「こんな状況なんで、タダです」だって!
うあー。
こうしてオレは、次なる仕事を求め、鋸南町のボランティアセンターへと向かったのだった。

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園
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