山口祐二郎『奴らを通すな!』(ころから)
<これは、俺が反差別運動を「やらなかった」記録と、そして「やったきた」記録だ。>
山口祐二郎は冒頭にそう書く。まったくその通りで「やらなかった」記録は同書のほぼ半分ほどを占める。しかし「やらなかった」とはいえ、レイシストや右翼、新左翼関係者の描写は濃厚で、本人が右翼の運動内部にいながら、在特会をはじめとする<行動する保守>を逡巡しながら見つめ続けてきたのかは充分に伺える。近くにいればいるほど、いかに拳を振り上げ、声を挙げることが困難か、ということである。
しかし反差別運動を「やらなかった」間に、彼が「やってきた」ことはかつての友人への失望と行動する保守に対する怒りに満ちている。そしてレイシストをしばき隊の登場が状況と彼の行動を変える。
今年東京・新大久保で巻き起こったカウンタームーブメントの前夜と現在を理解する上には読むべき一冊。カウンターの現場に顔を見せる警備の方々にも税金で購入するように勧めておいたが、現在の反差別運動の最前線で「何が起こっていたのか」「何が起こっているのか」、そしてオレたちが「何に怒っているのか」を理解するためには是非読んでいただきたい。
『ハイリスク・ノーリターン』にもいえることだが、山口祐二郎は続編を書かなければならない人間である。
彼の「続編」を目の前で期待している。
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