徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

0勝3敗の行方~(I Can't Get No) Satisfaction

2010-06-26 02:37:16 | Sports/Football
手の平返しと謝罪要求ブームである。

以前このブログでも触れたと思うけれども、近所の書店で書名を見た瞬間、あまりのストレートぶりに怒りよりも苦笑してしまった『0勝3敗 ワールドカップ南アフリカ大会で岡田ジャパンが惨敗する理由』(タツミムック Football Time vol. 1)のAmazonレビューが凄い事になっている。
とても買う気にはなれなかったので立ち読み程度しか覚えていないけれども、もちろん内容は批判一辺倒ではなくて、一部擁護派による岡田ジャパン応援企画も含まれているとはいえ、ギャンブルのようなタイトルをつけた編集者のセンスは相当酷いものだ。
何つったって『惨敗』どころか2勝1敗で決勝トーナメント進出ですから。
もちろん批判、批評というのは表現の自由として保証されるべきものではあるが、その前提として偏見と予断を許さす、正当に評価されるべきところは評価する姿勢がオレたちの自由な意見を支えている。
しかし本大会直前まで、一部の自称サッカージャーナリスト、マスコミが繰り返していたのは、岡ちゃんへの不当なまでの批判であり、それは岡ちゃんの精神状態などという、まったく余計なお世話の人格攻撃にまで及んだ。ベスト4発言への揶揄、進退伺い発言の拡大解釈(手前勝手な深刻化)など正気を失っていたとしか思えないのはジャーナリスト、マスコミだった。

その象徴ともいえるのが金子達仁と杉山茂樹あたりだろうが、もはやその批判が芸の域にまで達した金子先生の場合、もはやありがたがるのはワールドカップを苦々しく思っている所謂アンチ・フットボール層にしかないのでここではおいて置く。
欧州サッカー信奉者の杉山茂樹の場合は絶対的な価値基準が欧州にある。そして岡田ジャパンに対して批判のための批判を繰り返す根拠はここにある。スタンダードが欧州にあるのだから、パクチソンをはじめ代表に欧州クラブ所属選手を擁する韓国代表を異様なまでに評価する。本田、松井など欧州で活躍するプレーヤーが数えるほどしかいない日本代表など評価に値しない。わかりやすいといえばこれほどわかりやすい人もいない。
欧州信奉者の日本サッカー批判を見ていて思い出すのが、70年代の初めに内田裕也とはっぴいえんどの間で交わされた<日本語ロック論争>である。いまや日本語ロックのオリジンという評価を受けているはっぴいえんどの取り組みに対して、「英語で歌わなければロックではない(ロックに日本語は乗らない)」とユーヤさんが噛み付いたという一件である。この<論争>の場合はむしろ「英語がロック派」の方が劣勢であり、不当な評価に怒り、噛み付いたというところが事実らしいのだけれども、欧州信奉者の日本サッカー批判と重なりあう部分が多いと思うのだ。これは“新しい文化”を受け入れた日本で必ず起こることでもある。

杉山茂樹の言っていることは要するに欧州で活躍できない日本代表プレーヤーは評価できないということに尽きるのだろう。一種の思考停止だとは思うが、欧州というフォーマットを日本にトレースするだけの話なのだから簡単な話である。
海外サッカーファンとJリーグファンの衝突も同じ構図で起きている(これが実に不幸な話なのだ)。しかし日本のサッカーファンは日本人による日本サッカーの熟成を願っているだけなのだ。当たり前のように日本語でロック(フォーク)を歌い始めたはっぴいえんどをオリジンとして、その後、欧米のフォーマットを巧みに利用しながら日本語で、この国独自のポップ・ミュージックが花開いていったように(日本のマーケットが閉鎖的であり、その楽曲が世界のマーケットではほとんど相手にならない現状も重なり合うことだと思うが、これは再考)。

世界のガマは正々堂々と「謝罪」した
サッカー番長は果たして「謝罪」するのだろうか。

(追記 6月26日)
<皆一体となったという集団主義からでていないから、確実な得点はしえない、3点もとっちゃったでしかない、その限界を、本田は感じてしまっているから、予選突破しても喜べない、先がみえてしまったからだ、日本でしかプレーしていない選手が喜んでいる。>(ホスピタリティの場所【山本哲士公式ブログ】

これは酷い曲解と誤読である。本田がゲーム後のインタビューで(I Can't Get No) Satisfactionと言ったのは現時点での結果についてであって、チームの限界になど言及していないのは明らかだろう。どういう脳内変換をしたらこんな曲解ができるのだろう…って、そりゃ山本さんの脳内で最初から「結論」が出ているからだよw
ベスト4ではなくて優勝(目標)宣言までした本田が(I Can't Get No) Satisfactionと言ったのは、ミック・ジャガーと同様、“こんなでところじゃ、まだまだ満足できないぜ”ということである。
ま、山本さんのこの記事、サッカー以外の批判は納得できる部分が多いんだけどね。



(追記 6月26日)
<(前略)一方で、トホホな結末になったのは1月に「0勝3敗 ワールドカップ南アフリカ大会で岡田ジャパンが惨敗する理由」という非公式ガイドブックを発行した辰巳出版だ。
同書ではオランダ戦は「0‐3」で敗北、デンマーク戦は「『大敗』はなくとも『勝機』もない」などの識者予想や岡田武史監督(53)の進退を問う記事などが掲載されており、今となってはなくともバツの悪い内容となってしまった。
日本代表の快進撃に同社は「こんなに勝つとは思わなかった。正直、沈黙を守るしかない」と閉口。「ネットで叩かれているであろうことは予想できるが、怖くて確認はできない。まあ、この本で日本代表が危機感を持ってくれたのかな? いや、こんな事言ったらまた叩かれるな…」
同書の売れ行きも「初戦のカメルーン戦に勝利した後ぐらいから返本が相次いでいる」と笑えない状況だそうで大会後の検証本発行などは「火に油を注ぐだけ。傷口に塩を塗りたくない」とさすがにこりごりのようだ。(以下略)>(2ちゃんねる「『0勝3敗』(タツミムック)とは一体何だったのか」→東スポより)

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