マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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山添のクワ初め

2013年04月17日 06時43分38秒 | 山添村へ
山添村のとある大字住民は今でも正月初めにクワ初めの儀式をしている。

祖母は「打ちどめ」と云っていた「クワ初め」は農耕初めに行う作法である。

クワ初めは田打ちの儀式であって、田んぼにクワを入れる真似ごとをするウチゾメ(打ち初め)或いはクワハジメ(クワ初め)である。

名称はそれぞれであるが行為は同じであろう。

亡くなった祖母のあとを継いだ男性。

クワ初めは「今でも1月11日にしている」と云う。

田んぼに正月のモチと同様に半紙にウロジロを敷いて2枚のモチを重ねて葉付きのコウジミカン、ツルシガキ、髭があるトコロイモを供える。

その横にはもう一つのお供えもある。

同じように半紙に乗せた洗い米とアズキである。

それをおまして東に向かって拝む。

その場でミクワ(三鍬)打つという作法は荒起こしするような感じでクワを3回入れる。



親戚筋にあたる室生下笠間の婦人のⅠさんが話すには、出里の隣村である山添村の毛原で11日にしていたそうだ。

「今はどうやろか」と云っていた。

「田打ち」の儀式を拝見して思い出したのは宇陀市平尾の水分神社で行われるおんだ祭だ。

「鍬初之事」の台詞に「えんやっと打越して候えば・・・」がある。

また、奈良市都祁の小山戸の都祁山口神社の御田祭がある。

そこでは「春田のよそおい うつてのこづち しゃんしゃんしゃん」の台詞とともにクワで田を打つ所作をする。

奈良市都祁の吐山の下部神社で行われる御田子がある。

そこでは宮守さんが「伊勢の山の御田打つ男 しがらみのかさきて 植えようじょ 植えようじょ」と謡う。

山添村のとある大字で拝見したクワ初めは台詞や所作に登場する田打ちの儀式そのものである。

これらはあるべき農耕の姿を模した予祝の行事。

正月初めに行われる実際の農耕の風習を伝統的な民俗行事で垣間見ることができるのである。

知人の写真家K氏が云うには「出身地の富士吉田では1月11日に畑に行ってクワゾメをした」と話す。

全国的に行われていたのであろう。

(H25. 1.11 EOS40D撮影)