本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

損したくないニッポン人

2015-10-10 09:47:08 | Weblog
■本
88 小説にすがりつきたい夜もある/西村 賢太
89 下流老人/藤田 孝典
90 損したくないニッポン人/高橋 秀実

88 西村賢太さんのエッセイ集です。芥川賞受賞前後の時期に書かれたものが、ほぼ発表順に収録されているということで、芥川賞の受賞コメントなど、この賞に関して書かれたものが多いです。この賞を少し斜に構えて受け止めつつ、これまで取れなかった恨みや取ったことの素直な喜びが透けて見えて、西村さんらしい真っすぐさと屈折の両方を味わえる文章が多数収録されています。西村さんの神髄はやはり私小説にあると思いますが、特に後半に収録されている「色慾譚」という連載エッセイで、西村さん独特の人間が生きていく上で付きまとう、どうしようもないみっともなさの描写を堪能できます。

89 センセーショナルなありがちなタイトルに反して、内容はとても地に足のついた良心的な内容です。野宿生活者支援のNPO法人理事の方が書いた本というだけあって、現実的な提案がなされていますし、何より、困窮している老人を救いたいという熱い思いが伝わってきます。自己防衛策として、現状あるさまざまな困窮者支援制度を知ることから提案されているところも現実的で(生活保護者などの制度利用者が増えればその制度が破たんすることも目に見えてますが、本当に困っている人をあぶり出すにはこの方法が一番現実的だと私も思います、破たんしたらしたでその時点で制度や予算配分の方を見直すのが政治なのだと思います)、単なる精神論を否定しているところも共感できます。この問題は、非正規雇用問題、少子化問題など、様々な問題とも複雑に絡み合い解決が難しいですが、だからこそ、世代間対立や自己責任論などの感情論に陥らないための、適切な情報提供と議論が必要なのだと思います。

90 私自身が「損をすること」が大嫌いで、そのために「安物買いの銭失い」の過ちを犯すこと多いので読みました。筆者自身の独特のユルい考察と、トピックスに関係のある人への取材を組み合わせた、いつもの高橋さんの構成に、今回は歴史的な文献からの引用も組み合わせて(そのために若干読みにくい部分も増えていますが)、複合的に「損」と「得」について考える視点を提供してくれます。最終章巻末の「人生は失われる。失われるのが人生で、損と引き換えに思い出を得るのである」という文章が非常に印象的に残りました。結局は損と得は表裏一体で、失って初めて得られるものもあるというのが、この本の結論ですし、真理なのだと思います。


■CD
44 CHRONICLE THE 20 GREATEST HITS/Creedence Clearwater Revival

 CCRという略称で有名なCreedence Clearwater Revivalのベスト盤です。土臭くも親しみやすい楽曲が満載で、発表から40年以上経った今に聴くとかえって新鮮に感じます。単なる懐古趣味を超えた楽曲のクオリティの高さも感じられ、「Proud Mary」、「Who'll Stop the Rain」や「Have You Ever Seen the Rain?」など名曲揃いの素晴らしい作品です。荒々しさと洗練さが同居した唯一無二のバンドだと思います。


■映画
68 ナイト&デイ/監督 ジェームズ・マンゴールド

 トム・クルーズとキャメロン・ディアスが共演したスパイアクションものです。能天気な二人のいつものキャラクターを最大限に活かし、予定調和と言えばそれまでなのですが、そのマンネリ感が本作では絶妙の安定感で、良質のエンターテイメント作品に仕上がっています。テンポのよい展開と二人の軽いキャラクターがうまく噛み合っていて、不快になりがちな平板なキャラクターがギリギリのところでキュートに感じられます。評論家受けはしないと思いますが、気楽に素直に楽しめるよい映画だと思います。
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