本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

チョンキンマンションのボスは知っている

2021-04-03 07:17:12 | Weblog
■本
27 チョンキンマンションのボスは知っている/小川 さやか
28 「具体⇔抽象」トレーニング/細谷 功

27  以前に読んだ『「その日暮らしの」人類学』がとても面白かったので読みました。自分がコミュ障でも相手がクズでも、ついでがあれば親切にしてあげる方がコミュニティ全体としてうまくいく、ということがメインメッセージだと私は理解しました。その他にも、騙し騙されるのが当たり前の厳しい環境下で、他人と無理なく共存しながら、したたかに上機嫌で生きていくためのノウハウがたくさん書かれていて参考になります。私は、チョンキンマンションのボスが、打ち合わせに時間通り行かない理由として、『そもそも自分たちを対等であるとみなしていない人々に対しては、「扱いやすい人」にならないことが肝要』と述べているところにシビれました。他人に親切にする場合でも、相手に負荷がかからないようにするという細やかな配慮が、この本で取り上げられているタンザニアのコミュニティの方が日本社会よりも行き届いていることにも驚きました。日本人はもっと他人に頼ることに寛容になるべきだと思いました(「自助」が一番にくる政権下では難しいかもしれませんが)。小川さやかさんの著書を読むと少しだけ頭が柔らかくなった気がします。自分のこだわりや所属する社会の慣習が、必ずしも絶対的なものではないことに気づかされます。最近、「資本主義」に対してネガティブな本ばかり読んでいたので、「貪欲に稼ぐ」ことのポジティブな面が描かれているこの本で、バランスが取れた気がしました。結局、資本主義の欠点が目立つのは比較的恵まれた成熟した社会に生きているからで、一定の生活水準を満たすためには「貪欲に稼ぐ」意欲をエネルギーにするしかないのかもしれません(もちろん一定の生活水準を満たした後に、資本主義にとらわれ過ぎない態度も重要ですが)。私も、「ついで」にすむことであれば頼り頼られ生きていこうと思います。

28 大好きな楠木健さんが、『「抽象」と「具体」の往復運動』を繰り返すことが重要、とよくおっしゃるのでタイトルに魅かれて読みました。期待通りの素晴らしい内容でした。ここ最近読んだビジネス書(と分類されることは筆者の細谷さんとしては不本意かもしれませんが)の中では一番だと思います。提示されている図式や演習問題が非常に巧みで、『「抽象」と「具体」の往復運動』という極めて抽象的な概念を具体的に理解する上でとても役立ちます。この本では抽象化とは「都合の良いようにを切り取ること」なので、自分がどのような軸で抽象化しているかについて自覚的であることの重要性が繰り返し述べられています。冒頭に述べた楠木健さんだけでなく、私の大好きな作家である、佐藤優さんが「アナロジー」(似ているものから新しいアイデアを得ること)の重要性を強調され、出口治明さんが「タテ・ヨコ思考」(歴史と世界の中で自分の思考を位置付けること)を繰り返し述べられ、内田樹さんが文章中で「問題の次数を一つ繰り上げて」という表現をよく使われていることなどが、全てつながった気がします。みなさん、『「抽象」と「具体」の往復運動』とその抽象化に当たっての自分の軸や覚悟を持つことの重要性を強調されているのだと思います。この本のメインの主張ではないと思いますが、「他人のことはなるべく具体的で詳細な事情までを考慮するようにし、自分のことはあまり特別視せずに引いた目で一般化してみるぐらいが、他人とのコミュニケーションではちょうど良くなるのです」というアドバイスは、常に心に留めておきたいと思いました。知的生産活動に関わる全ての人にお勧めしたい本です。


■映画
26 ペギー・スーの結婚/監督 フランシス・フォード・コッポラ
27 七つの会議/監督 福澤 克雄

26 「地獄の黙示録」、「ゴッドファーザー 」シリーズのフランシス・フォード・コッポラ監督が、こんなに優しい作品が撮れるのか、と逆にびっくりする作品です。当時30歳を超えていたキャスリーン・ターナーが高校生を演じるのはさすがにコスプレ感が凄いですが、それでもとてもキュートです。ニコラス・ケイジも、まだイケメン俳優と呼べるギリギリの容姿で、野心たっぷりの演技を見せてくれます。よくある夫との関係に悩む中年女性のファンタジーものですが、さすがコッポラ監督だけあって手堅い演出です。甥のニコラス・ケイジや、今や個性派映画監督としての地位を築いた幼少期のソフィア・コッポラを起用するなど、コネ感が漂うのはご愛敬でしょうか。それにしても、アメリカのハイテンションな高校生活と、成功したか否かのモノサシだけで評価する社会も、なかなか生きにくそうです。そういった表面的なものとは異なる価値観を提示して終わるエンディングには共感できました。

27 企業版「アウトレイジ」のような作品です。多数の豪華キャストによる濃い演技を存分に堪能できます。野村萬斎さん、香川照之さんのコミカルになるギリギリの過剰な演技は、「そんな奴おれへんやろ〜」感満載ですが、ストーリー展開の面白さと相まって、ファンタジーとして引き込まれます。池井戸潤さんの小説やドラマを含めた映像化作品を観るのは初めてだったのですが、半沢直樹シリーズなどが大人気なのも納得です。サラリーマン生活で感じる鬱積のカタルシス効果が半端ではないです。企業社会の描き方の誇張具合も適切で、ハリウッドザコシショウさんのモノマネを観ているかのような、滑稽さと納得感があります。でも、こういうタイプのフィクションで日々のストレスを解消し過ぎるのも、あまり健全ではないかもしれませんね。私は人類の危機を防ぐマーベルの映画などでストレスを発散したいと思いました。
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