本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

DOGMAN ドッグマン

2024-09-08 16:08:17 | Weblog
■本
78 あひる/今村 夏子
79 ゲーム的リアリズムの誕生/ 東 浩紀

78 引き続き今村夏子さんの作品を。すっと読めるのに、独特の引っ掛かりのある3つの短編に魅了されます。表題作は、「のりたま」という名前のあひるに纏わるエピソードが、一見ほのぼのと描かれるのですが、背後に「死」や「暴力」の不穏さが漂います。「おばあちゃんの家」と「森の兄弟」は、2つの短編が、視点を変えて微妙に交差し合う、構造に工夫がみられる作品で、こちらも、一見愛情あふれる平凡な家族を描きつつも、「病」や「貧困」の影がつき纏います。人生のささやかな光と影を描くのが、今村さんは本当に上手です。「あひる」はデビュー作後5年近くのブランクを経て発表された作品とのことで、つくづく天才だと思いました。

79 少し前に読んだ「動物化するポストモダン」の続編ということで読みました。前作よりも、引用される作品に個人的になじみが薄く(「All You Need Is Kill」以外は全く知りませんでした)、論理展開も緻密で、正直ついていくのに苦労しました。「動物化するポストモダン」で論じられた、オリジナルの作品を超えて二次制作などで流通する「キャラクター」という視点に加えて、ゲームでその「キャラクター」を操作する「プレイヤー」の視点も意識しながら、現代文学は発展しているというのが、大まかな主張であると私は理解しました。私もゲームをするときによく行いますが、キャラクターが死ぬ度に、リセットとロードを繰り返す構造からは、本当の死を描くことはできないが、そこに、「プレーヤー」の視点を導入することで、逆説的に読者に「自分ごと」としてとらえられるメッセージが届く可能性について語られているとも感じました。このような、「虚構」と「現実」のメタ的な視点を含む展開が、村上春樹さんの「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の「影」と「僕」の対立と関連付けられている点も、村上春樹さんファンとしては興味深かったです。後に村上春樹さんが、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の続編的位置づけの「街とその不確かな壁」を発表されたことも、 東浩紀さんが論じられているポストモダン後の文学の流れと呼応しているのかもと思いました。


■映画
74 エクスペンダブルズ ニューブラッド/監督 スコット・ウォー
75 DOGMAN ドッグマン/監督 リュック・ベッソン

74 シルベスター・スタローン率いる老兵アクション映画、「エクスペンダブルズ」シリーズの4作目です。シリーズのどの作品を観ても同じような展開(おじさんたちが銃を撃ちまくったり、爆破しまくったりします)なので、何作目まで観たかがわかりません(このブログで検索したら3作目だけまだ観ていませんでした)。少し疲れていたので、頭を使わなくてもよい映画をということで観ました。ネタバレしても支障がないと思いますので書きますが、シルベスター・スタローン演じる隊長がまあまあ前半で爆死しますが、最終盤に復活し大ボスをやっつけます。大ボスの正体も含めて序盤で結末が容易に予想できる安定感が凄いです。作品の大半に登場しないので、いくら歳を取ったとはいえ、スタローンは楽をし過ぎだと思って調べたら、シリーズ2作目からは主演扱いはジェイソン・ステイサムになっていたんですね。彼だけがまともな演技をしていたのでそれも納得です。ドルフ・ラングレンに至っては、もともと上手い役者ではないのに、本作では過去最悪の演技で逆に爆笑できました。一丁前に登場人物の多様性も意識されています(アジア系の俳優が結構活躍します)。まあ、たまにはこういう予定調和な作品を観て、不条理な世の中を忘れるのもよいと思います。

75 リュック・ベッソン監督はもはやオワコンだと思っていたのですが、予想に反して素晴らしかったです。監督作としての傑作「ニキータ」や「レオン」に匹敵するとは言いませんが、脚本や制作を担当した、「Taxi」シリーズや「トランスポーター」シリーズよりも面白かったです。後味のよい「ジョーカー」といった趣で、壮絶な過去を持つ主人公が、特殊能力を用い、犬達を率いて犯罪を行う姿がクールです。犬を巧みに使ったアクションシーンもユニークで見応えがありました。意味不明のエンディングを筆頭に、リュック・ベッソンらしい、癖の強いスタイリッシュさもたまりません。音楽の使い方も絶妙で、ありそうでなかった挿入歌の組み合わせが個人的にはツボでした。過去が明らかになるにつれて、冒頭の謎が明らかになる構成も巧みで、一気に作品世界に引き込まれました。久しぶりにフランス制作の上質なエンターテイメント作品を観ました。
コメント
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