本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

親の期待に応えなくていい

2021-04-10 06:12:20 | Weblog
■本
29 親の期待に応えなくていい/鴻上 尚史
30 空中ブランコ/奥田 英朗

29 タイトル通り思春期の読者向けに、親からの「自立」をテーマに書かれた本です。この世代の子を持つ親たちが読んでも役立つように書かれているのもミソで、「子離れ」も裏テーマになっています。子どもの立場からすると、「その人を一番よく知っていること」と「その人に一番役に立つアドバイスができること」は違うという指摘は、私自身も親に相談して従ったことにより、後悔した経験があるのでとても共感しました。子どもからもし相談を受けたら、自分の思い込みを極力排し、その分野の知識を学んでからアドバイスをしようと思いました。また、親側の立場からすると、子育ての目的は「子を健康的に自立させること」とう指摘が胸に染みました。子どもに自分が実現できなかった夢を託したり、周囲に誇れる人間になって欲しいと期待をかけたりするのは人間の性かもしれませんが、子どもがそれなりに好きなことをしながら、最低限健康的な生活を送るのに必要な収入を得つつ自立できるように支援することが一番大切だと思いました。最後は鴻上さんお得意の「世間」と「社会」そして「同調圧力」の話になりますが、「家族」が「世間」になり、親が子どもに対して「同調圧力」をかけると不健康だと理解できたので、全てが繋がりました。結局は子どもが「他者」であると受け入れ、尊重することが重要なのだと思います。

30 精神科医伊良部先生シリーズの2作目です。前作の「イン・ザ・プール」が面白かったので読みました。この作品で直木賞を取ったのも納得で、前作以上に伊良部先生の破天荒さが増して作品の魅力も上がっています。読んでいる私の方も、伊良部先生の世間のしがらみを無視した奇行に振り回されるうちに、患者の神経症状が緩和されるという構造に慣れてきたので、その葛藤が解消された際の癒し効果が増した気がします。逆に、その現代社会の「生きにくさ」すらエンターテイメントとして成立させる構造自体に、若干の恐怖を感じますが、伊良部先生のダメ人間っぷりと必ずハッピーエンドで終わるという安心感が全てを包み込んでいます。映画版では、松尾スズキさんがこのキャラクターを演じられていましたが、松尾さんだとどうしても毒気が含まれてしまうので、個人的には出川哲朗さんのイメージに近いです。


■映画
28 家族はつらいよ/監督 山田 洋次
29 108〜海馬五郎の復讐と冒険〜/監督 松尾 スズキ

28 「男はつらいよ」シリーズは定年後の楽しみに取っておくつもりですが、他の山田洋次監督作品も徐々に観ていきたいと思っています。この作品は数年前に映画館で観た予告編がずっと印象に残っていました。ストーリー的にはよくある三世代同居の大家族ものですが(今となってはこんな大家族は少ないでしょうが)、橋爪功さん、吉行和子さん、西村雅彦さん、夏川結衣さん、蒼井優さん、妻夫木聡さんの安定感抜群の演技が素晴らしく、ずっと目が釘付けでした。筋を良く知っている古典落語で、噺家さんの技量に圧倒されるのと似た感覚になりました。タイトルデザインは横尾忠則が担当されているのですが、そのフィーチャーのされ具合にも圧倒されました。普通は映画の最後にわざわざクレジットされませんよね。

29 劇団「大人計画」主宰の松尾スズキさんの監督作です。機会に恵まれず劇場でお芝居を観たことはないのですが、松尾スズキさんの映画、小説、脚本、エッセイが大好きです。劇場公開時から興味があったのですが、前評判のエロティックさに怯んで行けないままでした。今回、動画配信で観たのですが、映画館で観なくてよかったというのと、よくこの内容で劇場公開できたな、とまず思いました。映画館で観ていたとしたら、終映後、他の観客の人たちと目が合わせられなかったと思います。それほど過剰なエロティシズムでした。過剰に描くことにより、主人公の純愛を際立たせる狙いだと勝手に理解しましたが、それにしてもその過剰さに気後れしてしまいました。私にこの作品を受け入れられるだけの器は、まだないようです。私のような反応をする人が一定数いることは、企画段階からある程度予想できたと思いますので、興行的には大きな成功が見込めないにもかかわらず、劇場公開につなげられた、松尾スズキさんの業界内での地位と影響力の大きさの方に感心してしまいました。中山美穂さんはメタな情報量の方が多くて作品内では違和感しか感じませんでしたが(それが狙いのような気もしますが)、坂井真紀さんのコメディエンヌぶりと、星野源さんのエンディング曲がよかったです。
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