本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

もう「はい」としか言えない

2018-07-21 10:40:17 | Weblog
■本
58 もう「はい」としか言えない/松尾 スズキ
59 マクルーハンはメッセージ/服部 桂

58 松尾スズキさんの芥川賞候補作。結果が出る前に読もうと手に取りました。神経症的でエキセントリックなキャラクターが織りなすグロテスクなドタバタ劇はいつも通りですが、移民問題や尊厳死といったグローバル規模の現代的なテーマがよりダイレクトに取り上げられていて、新しい試みもなされています。破天荒なストーリー展開の割りには、取っ散らかった感じはせず、きちんと作品世界として成立しています。芥川賞の結果は残念ながら落選でしたが、読後感もよく、これまでの松尾さんの小説の中で最も完成度が高いと思いました。表題作の他に、「神様ノイローゼ」という作品も収録されていますが、こちらは西村賢太さんを思わせるような私小説的テイストの作品です。主人公がトラウマになった「水死体事件」の謎を解くという趣向も凝らされていて、松尾さんの少年時代を想像させながら最後まで一気に読ませる技法は見事です。

59 1960年代から70年代にかけて一世を風靡したメディア論の大御所、マーシャル・マクルーハンの解説書です。名前と「メディアはメッセージである」という発言は何度も目にしたことはあるのですが、原書(意外と手に入りにくいし高い)は読んだことがなかったので、入門書として読んでみました。著書や理論の紹介だけでなく、マクルーハンという人自体やその理論をインターネットが普及した現代に応用するとどう解釈できるのか、といった点まで解説されていて参考になります。マクルーハンがウディ・アレンの「アニー・ホール」に出演したことや、日本に紹介したのは竹村健一さんであることを初めて知りました。著書の服部さんが翻訳された「〈インターネット〉の次に来るもの」という本を以前に読んだのですが、その本がマクルーハンの文体にかなり影響を受けていることをこの本を読んで知り、その本の理解も深まった気がしました。


■映画 
55 殿、利息でござる!/監督 中村 義洋

 タイトルと主演が阿部サダヲさんということで、コメディ映画だと勝手に思っていましたが、意外と骨太の人情派時代劇でした。とにかくキャストが豪華で、妻夫木聡さん、竹内結子さん、松田龍平さんといった他の映画では主演級の俳優を惜しげもなく脇役で使っています。これだけ脇役が豪華なので、殿様役にフィギュアスケートの羽生結弦さんをキャスティングしたのも納得です。ストーリー的には「利息」を取って宿場町を復興させるという知恵よりも、町全体のために自己を犠牲にしてまでお金を集める人々を重点的に描いたものなので、先述した私の誤解も含め、タイトルはもっと他のものにした方がよかったと思います。キャッチーさを優先したのでしょうが、豪華俳優陣の見せ方も含めて、かなり本格派の作品なのにそれをうまく伝えきれていない点が少し残念に思いました。
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