本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

恐れのない組織

2022-03-05 07:20:07 | Weblog
■本
18 恐れのない組織/エイミー・C・エドモンドソン 
19 コマースマーケティング/山川 茂孝

18 サブタイトル通り、近年ビジネス界で注目されている「心理的安全性」が、学習、イノベーション、成長をもたらす、という事実を、主に医療現場の調査などから学術的に証明した本です。要は各人が現場でした失敗を率直に共有できるだけの「心理的安全性」が担保されている組織の方が、その失敗を隠す組織よりも、集団的な学習、改善が進み、より高い能力を獲得できるという趣旨だと私は理解しました。「心理的安全性」という概念を冒頭で、「感じよく振る舞うこととは関係がない」や「目標達成水準を下げることではない」など誤解されやすい要素を否定することで、明確にされているのでわかりやすいです。同様に「失敗」にも「回避可能な失敗」(学習やプロセス改善により避けられるもの)、「複雑な失敗」(全体のシステム改善が必要なもの)、「賢い失敗」(未知の領域に仮説に基づき挑んだ結果生じたもの、仮説の検証に貢献したもの)があると定義し、「回避可能な失敗」を繰り返した場合や明らかなルール違反は制裁措置を取るべき、と「心理的安全性」が規律の低下を誘引するものではないことも明確にされています。失敗や無知を認める謙虚さ、率直さが推奨されている一方で、悪意や怠惰からの行為には厳しい対処を取ることが強調されていて、現時点の日本の会社組織を変えるには課題が山積な気もしますが、非常に共感できる内容です。失敗例としても成功例としても、福島原発の事例が取り上げられている点も切ないです。

19 オンライン、オフラインを問わず、売るためのマーケティング(コマースマーケティング)について書かれた本です。「コマース」という言葉を用いつつも、近年話題のNetflixなどの「サブスクリプション」やUberなどの「ギグワーカー」を活用したサービス、果てには「サーキュラー・エコノミー」(リユース、リサイクルも販売、消費に組み込んだ経済圏)にまで、議論が発展し、とても知的に刺激される内容です。細やかな注の付け方(Webからの引用には最終閲覧日まで付けられています)も含め、筆者の膨大な知識と精緻な議論の進め方が印象に残ります。一方で、ECモールやソーシャルメディアの活用方法など、実務に役立つ知識も多く参考になります。教養書と実務書を兼ね備えた内容で、すぐ実務に活かせる具体的なノウハウだけを学びたいという方にはもしかしたら即効性はないかもしれませんが、俯瞰的にマーケティング(コマースに限りません)の流れを把握し、今後を考える上では、とても有益な本だと思います。


■映画
14 わが母の記/監督 原田 眞人

 井上靖さんの自伝的小説を、「クライマーズ・ハイ」などを監督された原田眞人さんが映画化した作品です。樹木希林さん、役所広司さん、宮﨑あおいさんの三世代にわたる演技合戦が何と言っても見物です。認知症で情緒が不安定になった老人という、ともすれば後味が悪くなる役を、ギリギリのところでチャーミングに演じられた樹木希林さんは圧巻です。役所広司さんも、気難しい作家が歳を重ねるごとに丸みを帯びてくる姿を、安定感たっぷりに演じられています。宮﨑あおいさんは、高校生くらいから大人の女性となるまでの変化が激しい時期を、違和感なく見事に演じ分けています。「わが母」の解釈が二通りに取れるストーリーも深みがあります。ただ、構成上仕方がないのかもしれませんが、エピソードが断片的過ぎて、一本筋の通った流れというものが生まれていない点が少し残念でした。それでも、3人の名優と脇を固める実力者俳優が醸し出す空気感に、ただただ引き込まれます。伊豆を舞台にした風景も美しいです。
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