本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

JUNK HEAD

2022-03-19 12:29:15 | Weblog
■本
22 属国民主主義論 /内田 樹、白井 聡

 内田樹さんと白井聡さんによる「日本戦後史論」に続く、対談本です。凄いタイトルですが、基本的にはお二人のこれまでの主張(本来日本の自主独立を推進すべき保守層が、自らの権力維持のために対米従属路線を取っていることの矛盾)について語られている本です。相変わらずのお二人の舌鋒の鋭さは痛快ですし、その分析は勉強になりましたが、本作はこれまでの対談よりも極論が多く、コロナ禍の政府の対応への批判など(強硬な手段を取れなかったことが問題ではなく、科学的な根拠や現場のリソースを考慮しない場当たり的な意思決定が問題だったと私は考えています)、個人的には賛同できない面もありました。それでも、これだけ長い対談本を飽きさせずに読ませる、お二人の話芸と引き出しの多さは見事だと思いますし、基本的には共感できる内容が多かったです。文庫には、2021年の衆院選挙結果を踏まえた対談が収録されていて、最新の社会情勢についてのお二人の意見が聞けた点もよかったです。批判的に社会情勢を見る視点が養える本だと思います。


■映画
16 バトル・オブ・ザ・セクシーズ/監督 ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス
17 JUNK HEAD/監督 堀 貴秀

16 以前に映画館で予告編を観たときは、コメディ映画だと勝手に思っていたのですが、全編を観ると社会的メッセージに溢れたとても志の高い作品でした。なぜ当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったエマ・ストーンが主演したのかという疑問も解消しました。基本的にはタイトル通り、男女のテニス対決を通じて、その差別を描いた作品ですが、女性側だけでなく、男性側の視点や、性的マイノリティの立場も丁寧に描かれている点に共感しました。実在する年老いた男性テニスプレーヤーのエキセントリックなキャラクター設定(それが原因で最初はコメディ作品だと思っていました)と、それ以外のクールな視点の対比も印象的です。その俯瞰的な視点を意識してか、カメラワークもクライマックスのテニス対決シーンでさえも、アップを控えテレビ画面を通したかのような平板な映像が多用されるなど、セオリーに反したチャレンジングな点も個人的には評価したいと思います。逆に、そのあたりが興行的にも賞レース的にも中途半端になった原因なのかもしれませんが、多くの人に観られるべき作品だと思います。

17 テレビ番組の「激レアさんを連れてきた」で、堀監督のエピソードを知ってからずっと観たいと思っていた作品です。「たった一人で独学で作り始め、7年の歳月をかけ完成した奇跡のSFストップモーションアニメ」というコピー通りの、狂気すら感じる快作です。冒頭から30分くらいまでは、一人で作ったとは思えないストップモーションアニメのクオリティには感心しつつも、繰り返しのグロテスクなシーン(ギャグ?)が中心のストーリー展開が単調で少し飽き始めていたのですが、中盤以降は、監督の技術が向上したのか、カット割りもストーリーも斬新な要素が満載で、作品世界に完全に引き込まれました。続編が予感されるエンディングに到達したときは、すぐにでも続きが観たくなりました。なんといっても、似たような作品が全く浮かばない独特の世界観が素晴らしいです。粗削りなギャグのセンスも痛快でした。「オリジナリティ」とはこういうことである、という見本のような作品です。お金やスタッフが不足していても、アイデアと熱意と才能があれば、こんなにも素晴らしい作品が生まれるんですね。感動しました。
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