本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

映画には「動機」がある

2021-06-19 07:01:51 | Weblog
■本
49 映画には「動機」がある/町山 智浩
50 教養脳 自分を鍛える最強の10冊 /福田 和也

49 アメリカ在住の映画評論家、町山智浩さんによる『「最前線の映画」を読む』シリーズ第二弾です。前作が面白かったのと、大好きな「スリー・ビルボード」と「シェイプ・オブ・ウォーター」が取り上げられているので読みました。作品が発するメッセージを、監督の生い立ちや過去の作品まで詳細に調べ、できるだけ客観的に読み解こうとする緻密な姿勢が新鮮です。結構ネタバレを含む解説ですが、それでも、未視聴の作品を観てみたいと思わせる点が、映画評論として成功していると思います。もちろん、観たことのある作品については、「こういう観方もあるのか!」という気付きが多く得られます(例えば、「スリー・ビルボード」と「シェイプ・オブ・ウォーター」の両作品とも、ゲイの登場人物の描かれ方の意図について私は理解できていませんでした)。この本で紹介されていてまだ観ていない、「ラブレス」や「アンダー・ザ・シルバーレイク」といった作品を観てみようと思います。

50 福田和也さんが、ヒトラーの「わが闘争」や福澤諭吉の「文明論之概略」などの古典を、それぞれの著者の生い立ちも含めて解説して下さりながら、教養について考える内容です。文学、哲学、評論と幅広い(というよりも思いつくままに)教本が選ばれている点がユニークです。正直とてもよく理解できたものもありますし、ちんぷんかんぷんな箇所もありました。『よりよく社会を発展させるためには、人が広く学問、芸術、宗教に触れて自分の人格を養い育てていくことが必要であり、そうした努力や成果がそもそもの「教養」の意味』と歯切れよく定義づけて下さっています。確かにビジネスで役立つという視点以前に、自分の人格を高めるために教養を身につけるという心構えが必要だと感じました。「神曲」や「存在と時間」などはハードルが高いですが、「万葉集」や「論語」あたりから解説本を片手に読んでみたいと思いました。


■映画
46 ファンシイダンス/監督 周防 正行
47 ヴィジット/監督 M・ナイト・シャマラン

46 「Shall we ダンス?」で有名な周防正行監督が、僧侶の修行について描いたコメディです。1989年に公開された作品なので、バブル期全開の世界観と、修行僧のストイック(かつ俗世間にまみれた)生活の対比が面白いです。それまで成人映画を撮られていた周防正行監督のはじめての一般向け作品いうこともあってか、禁欲的な世界を描いているにもかかわらず、どこかエロティックなところも印象的です。主演の本木雅弘さんは頭を剃っての役作りで、煩悩にまみれた現代っ子が、山寺での修行でしたたかに苦闘しつつ成長する姿を見事に演じられています。アイドル時代の彦摩呂さんや、ふざけていない竹中直人さんの演技も今となっては新鮮です。原作漫画の映画化ということですが、テーマ選定に卓越したセンスを感じる作品です。

47 一時の低迷期を脱して、この作品以降の「スプリット」や「ミスター・ガラス」といった快作へと連なる、シャマラン監督の「復活の狼煙」的な文脈で取り上げられることの多い作品です。「シックス・センス」のような精巧な完成度の高さはありませんが、まるでインディーでのデビュー作のような粗削りなパワーに満ちています。シャマラン監督特有の大どんでん返しのインパクトこそ弱いものの、それまで思わせぶりな、いったりきたりの展開が続くので、「結局そのオチなんかい!」と突っ込んだときの爽快感が大きいです。伊藤潤二さんのホラー漫画を読んでいるかのような、過剰な恐怖が笑いに転化しています。クリエーターが自らに課した制約から解き放たれた瞬間を感じられる、ある意味清々しい作品です(内容はひたすらグロテスクですが)。
コメント
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