本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

メディアの闇

2021-06-05 15:49:28 | Weblog
■本
45 メディアの闇 「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相/相澤 冬樹
46 星の王子さま/サンテグジュペリ

45 先日読んだ「2016年の週刊文春」でも取り上げられていた、森友事件にライフワークとして取り組まれている相澤記者がNHK退社にまでに至った経緯と、彼が取材したこの事件の背景について書かれた本です。もう少し客観的にこの事件についての詳細が描かれた本だと勝手に想像していましたが、相澤さん一人称としての描写が満載だったので少し驚きました。また、相澤さんのことを正義感に基づく善意の記者とも勝手に想像していましたが、それ以上に特ダネを取りたいという野心がむき出しに書かれている点も意外でした。しかし、その分、相澤さんの人間性や取材テクニックが詳細に描かれていて読み物として抜群に面白かったです。仕事に取り組む上での考え抜くことの大切さ、相手との信頼関係、そして、それらの行動のベースとなる職業人としての誇りについても学ばせていただきました。記者という仕事の喜びや大変さについても余すことなく書かれています。また、組織で働くことの悲哀や、私人としては善人であっても組織人として権力者が下す判断の非情さについても生々しく理解することができます。記者を志す人にはお勧めしたい本です。まだまだ森友事件については解明されていない事実がたくさんありますので、相澤記者の今後のご活躍に期待したいです。

46 先週読んだブルボン小林さんの書評集でこの本が結構酷評されていたのと、子どものときに母親から勧められていたにもかかわらず、これまで何度も挫折していたので(無意識にブルボン小林さんと同じような嫌悪感を抱いていたのかもしれませんが)、いい機会だと思い一気に読みました(それほど長い話ではないので、実はすぐに読み終われるのですが)。池澤夏樹さんによる訳の方です。大人の行動に対する辛辣かつ表面的な批判については、ブルボン小林さんほどの嫌悪感は感じなかったです。しかし、星の王子さまの、自分に対する質問には答えないが、自分がした質問については相手が答えるまで繰り返すという態度は、それが子どもの特徴として描かれているにしても、あまり好きにはなれませんでした。余白の多い読み手の解釈に委ねる描写は企みとしては理解できます。読む年齢や体調によって評価が分かれる作品だと思いますし、それだけに再読する度に新たな発見もありそうです。ただ、やはり、そこまで絶賛すべき作品ではないと思います。構造としては、スヌーピーでおなじみの「ピーナッツ」と同じですし、毒や哲学的な考察の深さは明らかに漫画のこちらの方が上です。でも、谷川俊太郎さんの詩と同様の、生まれてきたことに対する漠然とした悲しみは良く描写されているとは思いました。

■映画
42 ジオストーム /監督 ディーン・デヴリン
43 ヘイル、シーザー!/監督 ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

42 気候変動に伴う自然災害をテーマにしたパニック映画です。自然を人間の力でコントロールできるようになった後の近未来を舞台にしている点が新しいです(たいていはそのコントロールに失敗したあとのディストピアものが多いですので)。そのコントロール可能になった自然を悪用しようとする陰謀に立ち向かう兄弟を中心に話が展開します。その陰謀の動機の小ささと危機の大きさが釣り合わないので、かなりリアリティに欠けます。主人公の恋人が凄腕の大統領のシークレットサービスという設定もあまりにもご都合主義的です。それでも、レビュー等で酷評されているほどには悪い作品ではなく、個人的には楽しめました。自然災害や宇宙ステーションの映像はインパクトがありましたし、主人公兄弟の確執の描かれ方があまりクドくない点もよかったです。自然をコントロールすることに無反省な点も気になりますが、エンターテイメント作品なのである程度は仕方がないと思います。各国が協力して地球規模の問題に取り組むポジティブな未来像の提示としてとらえることもできますし。

43 映画制作現場を舞台にしたコーエン兄弟による群像劇です。有名俳優が続々と登場してとても豪華ですし、ジョージ・クルーニーやスカーレット・ヨハンソンといったスター俳優を雑に扱っていて贅沢です。ところどころに挿入される架空映画の撮影シーンのクオリティがとても高くて楽しめます。コーエン兄弟の作品は、過剰に描写する部分とそうしない部分とのメリハリとそれによる不気味さ特徴だと個人的には思っていますが、この作品は情報が過剰で整理されていないことによりわかりにくくなっている気がします。まるで三谷幸喜監督作品のような過剰さを感じます(そこまでクドくはないですが)。名を上げた脚本家や映画監督はこういう複雑な群像劇を描きたくなるのかもしれません。必ずしも成功しているとは言えませんが、映画愛に満ちたきらびやかな作品です好感が持てました。
コメント
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