本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

ヒキコモリ漂流記

2020-12-26 07:05:17 | Weblog
■本
109 ヒキコモリ漂流記/山田ルイ53世
110 プロデュースの基本/木崎 賢治

109 髭男爵の男爵の方、山田ルイ53世さんの中二から二十歳くらいまでの引きこもり生活と、その後一念発起して大検を取って受かった大学をあっさり中退し、東京で極貧芸人生活を送った時代を描いた作品です。西村賢太さんの私小説のような壮絶な内容でした。プライドの高さによる生きにくさは両者に共通ですが、それを積極的に怒りというかたちで発散していない点や周囲や書籍とのコミュニケーションがない分、男爵の方が悲惨な気がします。芸人さんらしいコミカルかつ自虐的な文体にもかかわらず、引きこもりのパートは読んでいて胸が締め付けられる思いがしました。生来の地頭のよさとその後の努力やいくつかの幸運にも恵まれて、芸人として成功され、家族も持てたことは本当に良かったと思います。そのあたりの成功の話をほとんどされていない点にセンスを感じます。人生は人それぞれということを改めて実感できる良い本でした。「箱入り息子の恋」の市井昌秀監督が、髭男爵の元メンバーだったということもびっくりでした。

110 この本を読むまで存知上げておりませんでしたが、沢田研二さんや槇原敬之さん、そして、BUMP OF CHIKINなど有名アーチストを手掛けられた、音楽プロデューサーの方による仕事論です。素人にはなじみのない、音楽プロデューサーという仕事がどういうものかということがわかり興味深いです。結局いつもの結論になるのですが、「好きなこと」をやっている人は素敵だということを改めて実感しました。木崎さんの「ものをつくること」についての愛情がひしひしと伝わってきます。しかし、その大好きな音楽プロデューサーという仕事にも、さまざまな偶然により出会ったという事実(当初は英語ができるという理由で採用されて翻訳に携わってらっしゃいましたが、会社に置いてあるピアノを弾いているところを上司に見られて採譜などの仕事もするようになり、スタジオでの発言などが評価されて制作に異動されています)はとても面白いと思いました。天職は見つけるものではなく、向こうから見つけられるものなのかもしれません(もちろん見つけてもらうための能力や運が必要だとは思いますが)。書かれている内容は、多くの創作に関する書籍と共通するものですが、それが、なじみのあるヒット曲と絡めたエピソードとともに説明されているので、とても説得力があります。また、様々な人の分業により生まれる音楽を扱っているだけに、コミュニケーションの重要性が強調されている点も印象に残りました。


■映画 
108 バルカン超特急/監督 アルフレッド・ヒッチコック
109 キャッツ/監督 トム・フーパー

108 ヒッチコックの比較的初期のイギリス時代の作品です。コメディっぽく始まり、列車に乗ってからはスリラー、途中でアクション要素も強まるなど、取っ散らかった印象ですが、さすがにサスペンスの描き方は見事です。存在したはずの人物を他の人々が否定するという構成は、ジョディ・フォスター主演の「フライトプラン」やリーアム・ニーソン主演の「アンノウン」という作品にも受け継がれています。主人公の女性の勝気な性格や、その謎解きをサポートする男性の自分勝手な行動にあまり共感できませんでしたが、それでも後味が悪くないのは、監督の技量なのだと思います。特に超特急が重要な要素ではありませんので、原題の「The Lady Vanishes」の方が内容をよく表していると思います。

109 すごぶる評判の悪い作品ですが、私がミュージカル版を観ておらず比較対象がないためか、それほどひどいとは思いませんでした。有名な「メモリー」を筆頭に、やはり楽曲が素晴らしいです。緩急自在のダンスも観ていて飽きません。その反面、原作通りなのかもしれませんが、ヒット曲メドレーのような印象で、ストーリーが若干弱い気がしました。批判の多い、人面猫化したかのような登場人物のCG効果は、チャレンジとしては評価したいところですが、不気味の谷を越えられておらず、やはり必然性は感じませんでした。「英国王のスピーチ」、「レ・ミゼラブル」、「リリーのすべて 」と名作を次々生み出した、トム・フーパー監督の作品なので、どうしてもハードルが上がった点も物足りなさの理由だと思います。
コメント
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