本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

居酒屋兆治

2020-12-19 06:47:08 | Weblog
■本
107 映画にまつわるXについて2/西川 美和
108 ファンベースなひとたち/佐藤尚之、津田匡保

107 今、私が最も新作を観たい映画監督、西川美和さんのエッセイ集の2作目です。既読感のあるエッセイが多かったので、1作目を間違って買ったのかと思いましたが、電子版限定で以前に発売されていた際に読んでいた『映画「永い言い訳」にまつわるXについて』に収録されていたエッセイも本作に収録されていたためでした。というわけで、映画「永い言い訳」に関するものが多いですが、(主演の本木雅弘さんの面倒くさいメールの数々についてのエッセイが最高です・・・逆にこの内容の公開を認めた本木さんの器の大きさもたいしたものだと思いました)、短編小説や書評、映画評も収録されていて、西川監督のファンには楽しめる内容だと思います。映画というものがどういう行程を経て発表され、そして、ビジネスとして広報されていくのかがよくわかり興味深いです。身を切るように作品を生み出す、創造者の執念のようなものが痛いほど伝わってきます。

108 元電通のクリエイター、さとなおさんが以前に出版された「ファンベース」という本やその内容などを踏まえて議論するラボ、そして、その後立ち上げられた会社「ファンベースカンパニー」での取り組み内容、クライアント事例を集めた本です。まさに、この本自体が、「ファンベースカンパニー」のファンベース施策のように、一部のコアなファンを対象とした事例発表会のような内容です。現在ファンベースカンパニーで働かれている、元レタスクラブ編集長の方がお得意とされていた、コミックエッセイという手法を取り入れられている点もコミュニティ受けしそうです。ですので、ファンベースという概念になじみのない人にはハードルが高そうな本ですが、書かれている内容はどれも説得力があり、「まずファンの意見を傾聴することから始める」という手法も取り組みやすいと思います。また、あとがきにある「とはいえ、ファンは各社それぞれに違う」というメッセージは、安易なメソッドの売り込みではない、とても誠実で信頼がおけるものだと感じました。


■映画 
106 居酒屋兆治/監督 降旗康男
107 映画 みんな!エスパーだよ!/監督 園子温

106 「不器用ですから」を絵に描いたような、ただただ誠実で愚直な主人公兆治と兆治が営む居酒屋に集まる人々とのエピソードを描いた作品です。主演の高倉健さんの魅力が存分に発揮されていて、ファンの方は悶絶ものだと思います。令和の今から見ると、暴力、貧困やエロスが日常生活の中にさほど隠されることなくオープンにされていて、昭和のおおらかさを感じます。ヒロイン大原麗子さんの不自然なドヤ顔のアップや、おそらくスポンサーであろう商品の唐突な登場など、演出面での癖の強さも印象的です。主人公の親友を演じる田中邦衛さんは、唯一無二の演技で抜群の存在感です。常連客役の小松政夫さんのコミカルかつ切ない演技も実に味わい深く、その死が惜しまれます。極めて予定調和になりがちな設定ですが、個々の役者の高いスキルにより最後まで飽きさせず、重厚な作品を観たと思わせる点はさすがだと思います。

107 園子温監督作品にしてはあまり評判はよくないですが、個人的には楽しめました。確かにストーリー的には支離滅裂ですが、高校生の下世話な性欲に満ちたパワフルな作品です。また、商店街等の普通の街並みが実に魅力的で、東三河のまちおこし映画としてもよくできていると思います(半裸や下着のみの登場人物が多いので、このロケを許可した地元の懐の深さも素晴らしいと思います)。豊橋市の路面電車に乗ってみたくなりました。テレビドラマの映画化の割には、この作品だけを見ても内容が理解できる点も好感が持てました。池田エライザさんや多数のグラビアアイドルの、文字通り身体を張った演技に目が釘付けになります。家族と一緒に観ると気まずくなることは確実ですが、ただただバカバカしいお気楽な作品です。

コメント
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