本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

1917 命をかけた伝令

2020-12-12 07:19:07 | Weblog
■本
105 欲望の資本主義2―闇の力が目覚める時/丸山 俊一
106 THE MODEL/福田 康隆

105 「資本主義」をテーマにしたNHK番組の書籍化の2作目です。なんとなく「資本主義」について考えた気になるので、引き続き読んでみました。私の知識不足もあり、制作者側の巻頭、巻末の考察は自分に酔っている感じで正直よくわかりませんでしたが、ダニエル・コーエン、トーマス・セドラチェク、マルクス・ガブリエルといった海外の知の巨人(ちなみに、マルクス・ガブリエルさん以外の方の書籍はこのシリーズ前作以外は読んだことがないので、この方々が普段どのような主張をされているのかもよく知りません)の考察や対談は刺激的でした。特に、コーエンさんの「新しいテクノロジーは経済成長をもたらしていない」(新しいテクノロジーは、多くの中産階級から仕事を奪いより低賃金の仕事へと追いやり、一方で恩恵をもたらすのはそのテクノロジーをコントロールできる一部の上層の人々だけ)という指摘は私自身もたまに感じることが多かったので(感じるのは、エクセルやパワーポイントの資料の見栄えをよくするためだけに時間を費やしているときが多いですが)、いろいろと考えさせられました。スマホに代表されるテクノロジーは娯楽の面では、安価で多様なものをリアルタイムで提供してくれるので、多くの人に恩恵をもたらしていると思いますが、その一方で、生きるための糧を得る仕事という面では、多くの人にデメリットを与えているような気がします。そういう背景でのベーシック・インカムの議論の盛り上がりだとも思うのですが、ベーシック・インカムに賛同している人の多くが、人類全体の幸せを望んでいるような感じもしないので、テクノロジーや資本主義とどのように付き合っていくのがよいのか、に日々悩んでおります。などなど、特に何か役に立つ知識が得られるわけではないですが、こういう取り留めのない考察をする上での刺激にはなる本だと思います。

106 オラクルやセールスフォース・ドットコムで働いた経験もある、マルケト日本法人元社長の方の書籍ということで、SFAやマーケティング・オートメーション(MA)活用についての、ポジション・トークが中心かと思っていましたが、とても視野の広い内容で、良い意味で予想が裏切られる本でした。SFAやMAといったシステム導入の背後にある、営業のプロセス管理や分業の考え方(タイトルにもなっている「THE MODEL」)について、筆者自身の豊富な実体験をもとにわかりやすく伝えてくれます。米国で生まれたこの考え方を、いかに日本に適用させたかという考察も興味深かったです。さらに、商談のフェーズ管理の手法など営業現場での細かいテクニックにまで触れてくれているので、とても参考になります。また、筆者が米国のIT企業の日本法人を一から立ち上げて成長させた経験など、読み物としてもシンプルに面白いです。根性論ではない「営業」について知的に考える上で、とても有益な本だと思います。


■CD
19 Powers/A.J. Partridge

 XTCのフロントマン、アンディ・パートリッジが2010年に出したソロ名義では現時点での最新作です。XTCの新作が全く発表されないので、買ってみました。全編インストのアンビエントな作品で、アンディ・パートリッジ独特のポップセンスは全く活かされていません。「Through the Hill」という過去のコラボ作品を少し連想させる内容なので、熱烈なファンはそれなりに楽しめると思いますが、それ以外の方にとってはは正直退屈だと思います。夜眠るときに聴くとぐっすり眠れそうです。


■映画 
104 こんな夜更けにバナナかよ/監督 前田 哲
105 1917 命をかけた伝令/監督 サム・メンデス

104 一見わがままな筋ジストロフィー患者とそのサポートをするボランティアとの交流というセンシティブな題材を取り上げた勇気と、手堅く感動作に仕上げた手腕は見事だと思います。一方、その「感動」がこのテーマの問題点を見えにくくしているとも言えなくはないのですが、ドキュメンタリーではないのでそこは仕方がないのだと思います。主演の大泉洋さんは、嫌みにならないギリギリのラインで、病を抱えつつも自由に生きようとする主人公を好演されています。当初は主人公のわがままに反発しつつも、次第に彼の人間味に魅かれて支えようとする、現代っ子っぽい打算と純朴さを兼ね備えたボランティア役を、高畑充希さんが見事に演じられています。三浦春馬さんも、その恋人の医大生を爽やかに演じられていて、その姿が別の意味で心に染みるものがありました。あえて、序盤に主人公の最も嫌な側面を出し、その後にその真意を明らかにしていく構成も見事です。観る側を選ぶ作品だと思いますが、周辺情報だけで判断せず、最後まで観ることをお勧めします。

105 今年のアカデミー賞で地味に評価されていた戦争映画です。予告編を観て全編1カットで撮影した作品だと勝手に思っていましたが、実際はいくつかの箇所で切られていて少し騙された気分になりました。とはいえ、主人公に寄り添った長回しの臨場感は抜群で、戦場の緊迫感が痛いほど伝わってきます。あっという間の2時間でした。名もなき兵士の1日を切り取ったという点では、クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」に似た印象ですが、この作品の方が歴史上の大きな出来事を描いていない分だけ、かえってリアリティを感じます(逆にドラマとしての大きな盛り上がりはありません)。それにしても、戦場の描き方は、スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」以来格段に進化していますね。爆発で巻き上がる砂煙や、銃弾や血しぶきが飛び交う映像は実に生々しいです。静かなエンディングも含め、全体的に抑制の効いた演出が好ましいです。戦争という行為を否定しつつも、そこで戦う人々に対しては過度に称賛も批判もしない中立的な視線が印象的です。
コメント
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