本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱

2020-03-28 07:00:13 | Weblog
■本
29 労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱/ブレイディ みかこ
30 仕事のストレスが笑いに変わる! サラリーマン大喜利/水野 敬也 、 岩崎 う大
31 ライムスター宇多丸の映画カウンセリング/宇多丸

29 最近話題のブレイディみかこさん。以前に買ったままで未読だったこの本を読みました。イギリス労働者階級出身の「EU離脱」に投票した配偶者を持つ、ブレイディみかこさんだけあって、地に足のついた現地の空気感が伝わってくるだけでなく、文献研究による過去の歴史的経緯も踏まえた、イギリス労働者階級の現在地とEU離脱を選択した背景が描かれていて、今回の結果についても腑に落ちるものが多かったです。帯にも書かれている通り「トランプ現象とブリグジットは似て非なるもの」であることがよくわかりました。トランプ現象は移民等の排外主義と小さな政府(自己責任論)が結びついているが、ブリグジットは行き過ぎた小さな政府に対する反動と限られた予算の優先順位の問題(潤沢な社会保障が提供されているのであれば移民とも分け合うことはやぶさかではないが、ここまで歳出がカットされ白人労働者階級の生活が苦しくなると、逆差別を受けているような気持になっている)であると私は理解しました。逆に、イギリス労働者階級のEUに対する反発が、トランプ支持者が民主党に感じている、いわゆるエリート臭にあるということは共通しているということもよくわかりました。ブリグジットは経済的な側面が好転すれば右傾化した排外主義が弱まる可能性がある分だけ、イデオロギー問題化したトランプ現象よりも冷静な歩み寄りの可能性は意外とありそうだと感じました。

30 在宅勤務が続きストレスを感じたので読みました。水野敬也さんが動物の写真等と組み合わせることの多い、過去の偉人のエピソードからビジネスや人生の教訓を導き出すお得意の構成ですが、今回はかわいい動物の写真ではなく、キングオブコント優勝者かもめんたるの岩崎 う大さんの漫画とタッグを組んでいるところがポイントです。「苦手な人とうまくやる」などのビジネス上必要なスキルに対して、実社会でも応用可能な対応例から、徐々に発想を飛ばした破天荒な対応例にまで発展する岩崎 う大さんの漫画のさじ加減が抜群で、いつもは印象に残る水野敬也さんが提示される教訓が霞むほどです。職場での集団生活から離れた在宅勤務の息抜きに最適です。

31 ヒップホップ・グループ「ライムスター」の宇多丸さんによる、お勧め映画を引用しながらの人生相談集です。ライムスターのことはもちろん知っていましたが、宇多丸さんがここまで映画に詳しいとは知りませんでした。私も映画はそこそこ観てきたという自負がありましたが、この本で紹介されている映画の半分以上は観たことがないものでした。宇多丸さんの映画の知識の質量ともの豊富さに圧倒されました。観ていない映画の紹介が多いものの、宇多丸さんの映画を観る切り口がユニークなので、さほど気にならないところも感心しました。「日本語は、実は言文一致がまだあまりうまくいっていない」や、「こうだったかもしれない可能性」が「過去に向けて抱く夢や希望のようなもの」という指摘など、今まで私が思いもしなかった切り口からの発言も多くあり、とても刺激的な読書体験でした。


■映画 
27 お早よう/監督 小津 安二郎
28 我等の生涯の最良の年/監督 ウィリアム・ワイラー

27 引き続き小津安二郎監督作品を。この作品は中学生のときに授業で観たような記憶があります。冒頭からおならを用いたベタなネタが続くことやカラー作品であることから、従来の小津作品とは異なるポップな印象を持ちましたが、観終わるとじわっと気持ちが温かくも切なくなるいつもの小津作品でした。テレビが欲しいと駄々をこねる兄弟(特に弟)のコミカルな演技が抜群です。私の親世代も結局は子どものときは同じようにわがままで、ある程度甘やかされて育てられたことがよくわかります。少し悪意を持って描かれている郊外住宅地の主婦間の噂話を用いたマウントの取り合いの描かれ方も、現在のスクールカーストやソーシャルメディア上の状況を連想させるものがあります。とても限定されたパーソナルなものを描きながら、時代や空間を超えた普遍性を持たせられる小津監督のセンスに圧倒されます。

28 前週読んだポール・オースターの「サンセット・パーク」の中で繰り返し引用をされていたので観ました。1947年のアカデミー賞で作品賞も含む9部門を受賞した名作です。第二次世界大戦に参加した復員兵3人とその家族を描いた作品なので、敗戦国の日本人としては若干複雑な気持ちになるところもありますが(息子のお土産に日本刀や家族のメッセージ入りの日本国旗を持ち帰るシーンがあります)、戦争が兵士に与える悪影響と、一般市民との捉え方の乖離、そして、そこから回復する人間の強さや周囲のやさしさを、暗過ぎず甘過ぎず絶妙の塩梅で描いた素晴らしい作品だと思います。このように戦争の爪痕が随所に見られますが、それでも、その生活は当時の日本と比べて桁違いの裕福さで(ドラックストアで販売されている商品の豊富さが印象的です)、結果論でしかないですが、日本の戦争がいかに無謀だったこともよくわかります。また、戦勝国でありながら、戦争を美化していないところも好感が持てます(仮に日本が戦争に勝っていたら、これほど抑制されたトーンで復員兵を描けたかは疑問です)。
コメント
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