本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

サンセット・パーク

2020-03-21 09:37:36 | Weblog
■本
26 サンセット・パーク/ポール オースター
27 「ひきこもり」救出マニュアル〈理論編〉/斎藤 環
28 「ひきこもり」救出マニュアル〈実践編〉/斎藤 環

26 新作が翻訳されると必ず読む、ポール・オースターの新作です。本作も柴田元幸さんの翻訳が読みやすく、当然ストーリー自体も面白いので一気に読み終えました。リーマンショック後の経済的苦境に追い込まれて、サンセットパーク内の廃屋に不法居住する若者たちとその親たちそれぞれの視点から、各人の思いや他の登場人物との交流が描かれています。学費高騰や就職難など、現在にまで通じる若年層の苦境、廃屋近くの霊園に埋葬された著名人や往年のプロ野球選手の死にまつわるエピソード、そして、オースターらしい読者の予想を裏切る不穏なエンディングなど、全体的には暗い雰囲気が漂っていますが、その中で、時折登場人物がささやかな心の交流に成功させるシーンが、希望を感じさせ印象に残ります。執筆当時60歳を過ぎていたオースターが、21世紀のブルックリンの若者の気持ちを見事に代弁しているところも驚きです。思春期真っただ中の、私の息子たちにも読ませたいと思います。

27,28 身近に「ひきこもり」っぽい人が何人かいるので、読みました。さまざまな悩みを抱える相談者の質問に回答するかたちで、「ひきこもり」の背景や、その治療やコミュニケーション方法、さらには支援機関や社会復帰方法(そして、復帰できなかった場合の経済的な支援制度)などまで、この問題を考える上での、まさに理論面や実践面で必要な知識が網羅的に学べるのでとても参考になりました。親たちは子どもが安心してひきこもれる環境をまずは作るべき、という、一見逆説的な対応が、専門医による治療など、全ての次のステップに進む上で必要であることがよくわかりました。基本的には受容する態度で接するものの、暴力や金銭面での過度の要求に対しては、警察などの外部の介入や契約関係を結ぶなど、一定の線引きをするという指摘も納得度が高かったです。私は<理論編>から読みましたが、まずは、知りたい対処方法が書かれている〈実践編〉の該当箇所を読んでから、必要に応じて<理論編>へと進んでいく読み方でもよいと思います。自らの子どもに対する接し方を振り返る上でも有益な本だと思います。


■映画 
25 ランペイジ 巨獣大乱闘/監督 ブラッド・ペイトン
26 ジュディ 虹の彼方に/監督 ルパート・グールド

25 頭をほとんど使わずに楽しめました。巨大化した動物が大都市を破壊しながら戦う姿を映像化したら面白いのでは、という作り手側のシンプルなアイデアがわかりやすく伝わってきます。巨大化した動物を茶化していた日本の予告CMを見た印象では、コメディタッチのものかと思っていましたが、銃で撃たれた主人公が少し休んだだけで普通にアクション面で大活躍するなど、設定や展開は破天荒なものの、意外とシリアスな内容です。主人公をドウェイン・ジョンソンが演じていると、その凄まじい回復力や体力も受け入れられるから不思議です。巨大化した動物や大破壊される街並みのCGなど、細部も意外としっかりと作り込まれていて、B級映画のテイストながらも一定のクオリティが担保されているところも好印象です。

26 ジュディ・ガーランドの晩年(といっても47歳での早逝ですが)をレネー・ゼルウィガーが熱演して、今年のアカデミー主演女優賞を受賞した作品です。ジュディ・ガーランドが主演した「スタア誕生」の、落ち目の男性俳優役と同じような末路を、彼女自身が実人生で辿った皮肉が印象的です。レネー・ゼルウィガーは歌唱シーンも含めて、文句なしの演技を見せてくれていますし、子役時代のジュディの抑制された過去を巧みに挿入しながら、破滅へと向かう最後の輝きを描く手法も見事です。ただ、ここ数年、まさに「スタア誕生」のリメイクであるレディ・ガガ主演の「アリー/スター誕生」や「ボヘミアン・ラプソディ」、「ロケットマン」など、同じような大成功を収めた大スターの成功したが故の悲劇を描いた作品が続いたので、若干食傷気味になりました。普遍的なテーマだとほ思いますが、「ボヘミアン・ラプソディ」で、ライブエイドでのパフォーマンスを臨場感たっぷりに描いたような、インパクトのある工夫があってもよかったと思いました。
コメント
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