──中井久夫「絵画療法と私の今」(『統合失調症の有為転変』)
系というものは平衡を取り戻そうという
絶えざる細かな作用の集積として成り立っている。
これはゆらぎであって、ゆらぎがあるからこそ
外からの作用が入り込むことが可能である。
これを動的平衡というのであるが、
これにはフィードバックが不可欠である。
ちなみに、これと異なり、急性発症はフィードフォワードの過程であって、
これは作用の結果が作用を新たに起こりやすくし、
その結果どんどん強力で射程の長い作用となることである。
画を描くという行為には、フィードバックもフィードフォワードもあり、
両者が実に巧妙に組み合わされて、一つの時間的空間的建築物となっている。
そして作用と反作用とが異なることによって、
系は、この両者とは別の、一つの高い次元において動くのである。
*トポスの異なるふたつの作用点と作用点、両者の相互反照が連続する展開。
この二重の記述から、いわば内なる〝対話のテーブル〟があつらえられ、
そこに、どちらにも属さない新たな次元(第三領域)が顕現する。
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