(吉本隆明「夕ぐれごとの従属の歌」)より
おう ゆくところのないわたしたちの帰還の おもひ
とまどうひとびとの優しいこころ
この路上はいまも手慣れてゐてしかも未知だ
まるで異国のやうなちがった素ぶりの街々だ
わたしたちはそのなかで刺し殺さねばならぬ
架空のうたと架空の謀議と
たしかなひとつの破局とを
まるで義務であるかのやうに
ひとつの証しであるかのやうに
この夕べごとの従属と屈辱の思ひに形を与へねばならぬ
ひとびとよ
何処かに美しい街角と鋪道とがある
ちいさな夕星と団欒とがある
きっと其処には絶望に形をあたへることのできた仲間たちが
歴史の未明をけ破るように
沈黙と安息とをまもってゐる
おう ゆくところのないわたしたちの帰還の おもひ
とまどうひとびとの優しいこころ
この路上はいまも手慣れてゐてしかも未知だ
まるで異国のやうなちがった素ぶりの街々だ
わたしたちはそのなかで刺し殺さねばならぬ
架空のうたと架空の謀議と
たしかなひとつの破局とを
まるで義務であるかのやうに
ひとつの証しであるかのやうに
この夕べごとの従属と屈辱の思ひに形を与へねばならぬ
ひとびとよ
何処かに美しい街角と鋪道とがある
ちいさな夕星と団欒とがある
きっと其処には絶望に形をあたへることのできた仲間たちが
歴史の未明をけ破るように
沈黙と安息とをまもってゐる