イワン・アサノヴィッチの一日  畑と映画の好きな卒サラ男。

政官業癒着体質の某公共事業職場を定年退職。鞍馬天狗・鉄腕アトムの人類愛に未だに影響を受けっ放し。孫には目がない。(笑い)

演劇「家族の写真」を観て

2007-12-30 01:05:45 | 演劇

 俳優座劇場プロデュースの「家族の写真」を観た。(12月14日:ちば演劇を観る会)

ロシア現代劇作家ナジェーンダ・プトウーシナの作品。中村たつ・日下由美・石田圭祐らが好演するクリスマスの季節に相応しい、ぽっと心が温まるボードビル(軽喜劇)だった。

劇中にデイケンズの肖像画やデイケンズ10巻全集が小道具として登場する。これは訳ありで、プトウーシナの「家族の写真」がデイケンズの作品「クリスマス・キャロル」の逆を行く手法を採りながら同じテーマを謳いあげているからだ。

「クリスマス・キャロル」の主人公は老いたる守銭奴のスクルージー翁。亡霊の教唆で自身の30年、40年前のフラッシュバックを見せられ、人の世はカネではなく愛であるということを悔悟させられる。

一方、「家族の写真」の主人公は逆で、老いたる「瀕死の老婆」であり、宝石箱をいとも簡単に人にあげてしまう物欲の無い人間である。

しかし、いろんな縁で愛の糸が結びきれない人々を次から次へと幸福にして行くという役回りである。

イーゴリ役の石田圭祐が良かった。

イーゴリもまたスペインに別荘を持つ富豪であるが真に愛する女性と巡り会えないでいる。ひょんなことでタチアーナ(日下由美)を知り、すったもんだの末に結ばれる。

金持ちがとかく見せがちな嫌らしさを持たず・出さずで、知的で情熱的な男を石田圭祐が、演じているところが良い。しかし、何と言ってもクリスマスの夜に誰もが待ち望む心優しいサンタを身体いっぱいの演技で出し切っていたと言える。

大劇場では割れてしまいがちな彼のソフトな声音がこの芝居ではむしろマッチしていた。

この「家族の写真」もまた現代版のクリスマス・キャロル(祝歌)である。


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