イワン・アサノヴィッチの一日  畑と映画の好きな卒サラ男。

政官業癒着体質の某公共事業職場を定年退職。鞍馬天狗・鉄腕アトムの人類愛に未だに影響を受けっ放し。孫には目がない。(笑い)

ドナルド・キーンの東京下町日記:日本兵の日記」を読んで

2021-01-17 12:30:13 | 日記・エッセイ・コラム
「ドナルド・キーンの東京下町日記」(東京新聞発行)を読んでいる。
氏はアメリカのコロンビア大学で日本文学を専攻し、嵩じて2012年に日本に帰化している。2019年に97歳で逝去。
 作中の小見出し「日本兵の日記」の項を読んでいるうちに、イワン・アサノウィッチは言い知れぬ・・嗚咽するような気分に襲われた。
氏は米国海軍の語学士官として、太平洋戦争における日米の激戦地を、任務で渡り歩いていた。日本兵の2万人が戦死したガタルカナルでは日本兵の遺体のポケットから日記帳を取り出し読んだことが記述されている。

その幾人かの日記の内容が下記のとおり書かれていたと言う。
 「今なにをしている事か、父母よ兄妹よ 永遠に幸あれ」
 「昨晩は楽しい故郷の夢を見マスタ 皆んな元気で暮ラシテイルトコロデスタヨ」
 「腹が空いてなんだか さっぱり分からぬ・・」
 「顔が青くなり やせるばかり・・」
 「妻よ子供よ!いつ迄も 父帰る日を待っていてくれ」

上記の日記の叙述は、仮にイワン・アサノウィッチが当事者であったとしても、間違いなく同じ記述をしたに違いない。
氏は、あの日記を読まなければ、『私は日本の日記文学に深い関心を持たなかったかも知れない』と言っている。そして日記を書いた日本兵には会えるはずもなかったが、彼らは私に心を開いて語ってくれた初めての日本人であったと言い、加えて掛け替えのない親友だったのであるとまで言っている。
 
 人種差別の無い、氏の人類愛とも言うべき精神性に深く敬愛の念を抱かずにはいられない。かかる人格の持ち主であるからこそ、アメリカ人で大学教授という上流階級の身でありながら、氏は敢えて国籍を日本に変更したものと推慮できる。
関連して、もひとつイワン・アサノウィッチの心に或る信念が生まれた。
戦前の軍国主義が覆い尽くした日本の世の中で、それも激戦地のただなかで、日本兵の心の奥底にはまごう事なく「平和で懐かしい故郷の家族や兄弟・妻や子に対する思慕の念」が書かれており、軍国主義者らが宣う「忠君愛国」だとか「鬼畜米英」「一億玉砕」などと言う欺瞞的で且つ非人道的な言葉は見当たらない。
翻って平成・令和の世、血迷った輩が未だに戦前回帰を画策し憲法改悪を企んでいることには、怯むことなく強い警戒と打破をもって臨まねばならない。


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