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みどりの一期一会

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「ケアすること/されること」上野千鶴子~特集 女はどこにいるのか『現代思想』9月号より

2005-09-09 23:49:05 | ジェンダー/上野千鶴子
『現代思想』9月号(青土社)が届きました。



この本の【特集 女はどこにいるのか】の冒頭に、
上野千鶴子さんのインタビュー記事(P56~64)、
「ケアすること/されること」が掲載されています。



このインタビューの際には、わたしも同席させてもらいました。
上野さんと編集者との、ナマの話を聞けて感動したのはもちろんですが、
文章になったものを、あらためて読みなおすとこころに響きます。
そしていつものことだけど、
上野さんの、目線の低さとあたたかさに、共感します。

インタビュー「ケアすること/されること」の一部を紹介します。
 P59・・・・「わたしに興味があるのは、マクロな制度設計を目的とする、社会政策学や比較福祉レジーム論などのアプローチではありません。法学系・経済学系の方たちは、福祉社会学や社会政策学に関心があります。それは、必要だし、おやりになればいい。だけど私が同じことをやることはないと思います。社会政策はマクロアプローチですが、わたしはミクロアプローチ、つまり事例研究に興味があります。わたしに興味があるのは、現場の実践です。現場目線で、ケアという名のもとに何が行われているのかを知りたいと思っています。
 ケアという名のもとに何が行われているのかを考える際に、ケアには、「ケアとは、ケアの与え手とケアの受け手との間の相互行為である」というはっきりした定義があります。ケアとは相互行為の場で発生するアクションですから、行為の場面から切り離してモノのように取り出すことができないものです。相互行為にはかならずふたりの当事者がいます。すなわち、ケアの与え手とケアの受け手というアクターがふたりいて、この複数のアクターのあいだの、臨床的な相互作用の現場で起きる行為をケアと呼びます。だから、この双方にとって満足がいき、納得がいくケアでなければ、よいケアとは言えません。これが私の「基本のき」です。」

 P63・・・・「わたしがとりわけ協セクターに対して関心を持っているのは、彼女たちのケアの質に信頼を持つ手入るからです。彼女らは、業者間の競争に勝ち抜いて、生き延びられると思います。彼女たちには、利用者から選ばれる自信がある。これまでも、それだけのことをやってきていますから。」
  「わたしがつきあってきた協セクターの担い手たちは、本当に信頼のおける人たちでした。この人たちになら、自分の下の世話も含めて、わたしの看取りまでを委ねてもかまわない、と思えるような人たちでした。そういう希望を自分が持つことができるようになったというのが、この志(こころざし)型の協セクターの人たちの実践介護です。」

 P64・・・・「『自己決定』について話をすると、いつも出てくる質問があります。それもきまって男性高齢者から出てくる質問です。死の自己決定はあるか、という問いです。・・・・・・そういう問いを聞くと、わたしは違うなあ、といつも思います。当事者主権は生存のための権利であって、死のための権利ではない。生まれることに自分の意志が介在したでしょうか。予定して生まれたわけじゃない。予定して病気になったり、障害を持つわけじゃない。予定したように生まれ生きて、老いて、障害を持つわけではないのなら、なぜ死だけを予定して決めることができるのか。わたしは傲慢だと思う。」
  「こんなになってまであなたに生きていてほしい、と自分でない誰かに対して、自分が思えるか。あるいはこんなになってまで生きていてほしい、と自分でない誰かに思ってもらえるか。自分に対しても他人に対しても、そういうふうに思えない人が、悲しいかな死の自己決定ということを考えざるを得ないところに追い詰められるのでしょう。それも、ほんとうに自分の意思からというよりも、さまざまな配慮から。」
  「当事者主権とは、死ぬための思想ではない。よく生きるための思想なんです。」
  「終わりに、『現代思想』がケアをとりあげることになったことに感慨を覚えます。ケアは本能でもなければ、自然現象でもない、歴史と文化とそれに政治に規定された社会現象です。そしてケアをどのように社会に再配置するかには「思想」が問われます。理念なしにケアは語れませんし、今ケアの現場こそ、新しい「思想」が日々の実践の中から生み出されているもっとも刺激的な現場ではないでしょうか。」

『現代思想』(青土社)2005年9月号より

参照「生き延びるための思想」上野千鶴子~『atあっと』0号

特集「女はどこにいるのか」の他の記事も、
とてもおもしろくて夢中で読んでしまいました。
ちょっとむずかしい月刊誌ですが、
9月号は、ぜったいおススメです。

売り切れないうちに本屋さんに走って、
ぜひ手にとって、お読みになってください。

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9 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
購入予定 (テルテル)
2005-09-10 23:52:21
上野さんの「ケア論」とっても興味があります。ケアとは提供する側とそれを受ける側、双方の満足があってはじめて「いいケア」が成立するというのは同感です。本自体は難しいんだろうな。みどりさんが言うくらいだから。でも、購入予定です。
返信する
『現代思想』 (むく)
2005-09-11 00:19:52
お久しぶりです。早速購入手配しました。私も何時ケアする側になるか、またされる側にもなるかわかりません。今も軽い介護はしています。

やっと一般質問が終わったので一息。じっさいは消化不良ぎみです。

ブログも拡大写真ができるようになったので

また続けます。

TBありがとうございました。
返信する
よい本ですよ。 (みどり)
2005-09-11 12:45:40
テルテルさん

『現代思想』は、むずかしいけど良い本ですよ。

毎月は読んでないけど、評判の号は本屋で買います。上野さんの『ナショナリズムとジェンダー』は、この青土社からです。今回は編集者から直接送られてきたものです。

「女はどこにいるのか」は、今を足場に過去を見据えて検証し、同時に未来まで、遠くが見渡せる特集です。

わたしがこだわり続けている在日コリアンの問題をはじめ、外国人との関係にも言及しています。

上野さんの結びのことば。

「終わりに、『現代思想』がケアをとりあげることになったことに感慨を覚えます。ケアは本能でもなければ、自然現象でもない、歴史と文化とそれに政治に規定された社会現象です。そしてケアをどのように社会に再配置するかには「思想」が問われます。理念なしにケアは語れませんし、今ケアの現場こそ、新しい「思想」が日々の実践の中から生み出されているもっとも刺激的な現場ではないでしょうか。」

まったく同感です。「理念と思想なしには現場は語れない」。きっと、「ケア」をライフワークにしているあなたにとっても、でしょう。

この言葉、あなたへのプレゼントに本文に追加しておきます。ちょっと遅れたけど、「お誕生日おめでとう」。
返信する
『現代思想』 (みどり)
2005-09-11 12:51:37
むくさん

一般質問、ごくろうさま。これでいいということはないと思いますが、それを次につなげてくださいね。

『現代思想』 の特集、きっとあなたの役に立ちます。

ブログの拡大写真、拝見しました。一枚サムネイルと違うのがはいっているみたい・・・です(笑)。
返信する
覚えていてくれたんだ(喜) (テルテル)
2005-09-11 21:53:07
誕生日が夏だってこと覚えていてくれたんだ。うれしい限りです。
返信する
お誕生日。 (みどり)
2005-09-11 22:32:09
テルテルさん

お誕生日だってこと、ちゃんと覚えていましたよ。

なにか贈って驚かそうと思ったんだけど、正確な日にちを忘れてしまって・・・・ごめん。来年は忘れないように、手帳に書いとくから、何日だったっけ?
返信する
思想 (テルテル)
2005-09-11 22:49:37
上野さんの本は明日本屋にとりに行きます。何と言ってもみどりさんが紹介してくれた上野さんのことばに感動しました。ケアの現場で新しい「思想」が生まれている。なんて心強いことばだろう。実践を積み重ねてきている人たちをちゃんと見てきたから言えるんだと思う。それから誕生日は8月9日です。歳は忘れました。
返信する
読んだら感想をコメントを。 (みどり)
2005-09-12 10:08:54
テルテルさん

ははは、とっくに済んでたね。いつだろう、いつだったっけと思いながら、9月になってしまいました。

『現代思想』、読んだら感想をコメントしてね。
返信する
失礼いたします。 (こう)
2010-01-03 18:20:48
はじめまして、コメント失礼します。

昨日本屋でみかけて買わなかったのですが
気になっていたので検索し、こちらにお邪魔させていただきました。

紹介なさっている一部を拝見して購入を決めました。心して読もうと思います。




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