みどりの一期一会

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<保育漂流>公立民営化編(上)指定管理者変更に不安/公立民営化編(下)継続性維持へ四苦八苦

2015-10-17 20:36:26 | ほん/新聞/ニュース
きょうのブログは、まずフェイスブックでいろんな人にシェアされている、
昨日の、神奈川新聞の【カナコロ・オピニオン】「時代の正体」批判について(5)、
を紹介します。
言論人としての矜持を見た思いです。

論を興し民主主義を体現する存在でありたい【神奈川新聞】2015.10.16

中日新聞生活面には、一昨日15日と昨日16日の二日間連続で、
稲熊美樹さんの「<保育漂流>公立民営化編」の記事が出ました。

保育の現場の「いま」を深く見つめ掘り下げて、
抱えている問題をあぶりだして、言葉にして読者に届けてくれています。

神奈川新聞もよいけれど、中日新聞も権力におもねず、
とても読みごたえのあるよい記事が多いです。

言葉のちからって、大きいですね。

  <保育漂流>公立民営化編(上) 指定管理者変更に不安 
2015年10月15日 中日新聞

 自治体が設置する公立保育園が全国で減り続けている。公立を廃止して民間に移管したり、運営を民間に委託する指定管理などの手法で民営化が進んでいるためだ。四月から始まった「子ども・子育て支援新制度」でさらに民営化が進む可能性が高いが、民間移管や指定管理では思わぬトラブルも発生している。

 生い茂る木々に囲まれた岐阜県多治見市の池田保育園。三~五歳児が同じ部屋で生活を共にする異年齢保育が特徴で、地域で人気の保育園だ。しかし八月、保護者たちに激震が走った。

 「保育のやり方から先生たちの顔ぶれまで、すべてかわってしまうかもしれないなんて…」。保護者会長の野村寿江さん(33)は唇をかむ。

 池田保育園は公立保育園だが、市は二〇〇六年度から社会福祉法人「いしずえ会」を指定管理者として運営を委託している。だが市の選定委員会が本年度末でいしずえ会への委託を打ち切り、来年度からは市社会福祉協議会に委託すると決めたのだ。

 野村さんは長男(5つ)を預けている。卒園式で竹馬乗りを披露するため、今は練習に一生懸命だ。「自由に遊べる保育で、長男はのびのび育っている。こんなやり方を続けてほしいのに」

 園は来年三月末に全職員を解雇せざるをえないとしている。乳児がデッキから園庭に落ちないように設置した柵や、子どもたちがいつも遊んでいるおもちゃは、いしずえ会が購入したので、委託の切り替えですべて取り換えられる予定だ。

 新たな指定管理者となる予定の市社会福祉協議会は説明会で、「市の保育理念に沿った保育を進める」と述べ、園独自の保育を変える方針を示したという。

 保育園は、子どもたちが日中の大半を過ごす「第二の家」だ。園の保育環境が一変することにより、精神的に不安定になるなど、子どもたちへの影響を心配する保護者が多いという。

 保護者会副会長の井上裕美子さん(41)は「管理者が変わることは完全に行政の都合」と反発。保護者ら千二百五十七人分の反対署名を市に提出した。

 市子ども支援課は「総合計画で公共施設の指定管理が打ち出されている。これは市全体の方針なので、他の選択肢はなかった」としている。

 公立保育園の減少は、国から自治体に「ひも(使用目的)付き」で交付されていた運営費が、〇四年度に一般財源化されたのがきっかけ。〇三年度には認可保育園のうち54・6%を占めた公立保育園が、一三年度には40・4%に減った。

 民営化の手法の一つが、経費削減や民間の力の活用を目的とした指定管理者制度。ただ、多治見市によると、公立から指定管理者への変更で、市が削減できた費用は一園で年四百万円程度だという。

 指定管理は一定期間ごとに委託の見直しが地方自治法で義務づけられている。指定管理者の変更は、子どもたちへの影響が大きいため、保育園の指定管理を見直す自治体もある。

 川崎市は四月、「職員の雇用が不安定になり、保育の継続性が失われることを避けるため」として、指定管理期間が満了した五園を社会福祉法人に有償譲渡した。一園を除いて、指定管理者がそのまま譲渡を受けて運営している。
 (稲熊美樹) 


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  <保育漂流>公立民営化編(下) 継続性維持へ四苦八苦
2015年10月16日 中日新聞 

 手あかの付いた一冊の小さなノートには、小さな文字が隅々まで書かれている。プールに入るときの手順、子どもたちが口ずさむわらべうた、紙芝居を読むときの抑揚の付け方…。二〇〇七年度に、閉園する公立保育園を引き継いだ「けやきの木保育園」(名古屋市)の平松知子園長(53)が、公立保育園のやり方を目を皿にして観察し、書き記したものだ。

 「どんなささいなことでも、公立と同じようにやらなくてはと思ったんです」

 名古屋市は、公立を民間に移管する直前の一年間、保育の継続性を維持するため、移管先の民間から保育士を受け入れて、学んでもらっている。平松園長のノートは、そんな一年間の記録だ。

 ノートには、けやきの木保育園に移る園児の名前と、保護者の仕事やきょうだいの名、育ちの気になる点も記載されている。「保育は、目の前の子どもだけを見ていればいいのではない。子どもたちの家族関係を含め、丸ごと包んで引き受けよう」と思ったから。

 保育の継続性を保つため、平松園長は市に掛け合い、移管後一年間は公立の保育士に派遣の形で残ってもらった。その保育士が年長児クラスを担任し、保護者との関係を取り持ったり、アドバイスをくれたりした。他にも園は〇~二歳児の受け入れを始め、開園時間も延長。園に通っていない地域の親子のための子育て支援も充実させた。

 ただ、すべてがうまくいったわけではない。移管後一カ月ほどは、保護者から苦情の嵐。年中園児の一人は、「公立の保育がいい」と、転園していった。この子は二カ月で二度、保育園を変わったことになる。

 それから八年半。地元にすっかり根付いたけやきの木保育園だが、「民間移管はゼロからではなく、マイナスからのスタート」だと感じるという。それは「公立への信頼感が地域にあり、がんばっても納得してもらえないのでは」という心配があるからだ。

 家が貧しく、園での昼食と夕食で命をつなぐ子がいたり、保護者の事情で保育士が自宅に迎えに行かないと登園できない子もいたりする。平松園長は、そんな子にこそ公立が目を配るべきだという。「地域でどんな子を育みたいかを考え、実践するのは市の役割。保育をコストで考えないでほしい」

 平松園長の言うように、全国の公立は、虐待を受けた子や障害児らを積極的に引き受けていた背景がある。認可保育園には、正当な理由がなければ入園を断ることができない応諾義務があるとはいえ、障害児や困難を抱えた家庭の子の受け入れに積極的でない園もあるためだ。自治体は、民営化の流れの中でも、この公立の役割を生かそうとしている。

 横浜市は、株式会社が中心となって民間保育園を新設し、待機児童を大幅に減少させてきた。一方で、公立をゼロにすることはせず、各区に三園程度、計五十四園を残す計画だ。「残された公立の役割は、民間では手が回らないことをやり、見本を示すこと」。市保育運営課担当者は強調する。

 同市の民間保育園は六月時点で五百六十六園あり、認可保育園の87%を占める。民間は公立に比べて経験の浅い保育士が多いが、専門的な知識が必要な障害児保育や虐待児への対応などは、公立の保育士が相談に乗ったり連携したりする体制を整えたいとしている。
(稲熊美樹) 


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