みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

「性差別の理解少なく」 「女性に冷たい」~問題だらけで見切り発車の「裁判員制度」

2008-11-28 19:02:45 | ほん/新聞/ニュース
今日は、月に一度の母の病院の診察日。

姉たちとも待ち合わせ、「ひな野」でランチバイキングを食べてから、
アクティブGのお店を見てまわり、岐阜からかえってきたら、
朝日アスパラクラブから、裁判員制度のアンケートが届いた。

今日から、来年5月21日にはじまる裁判員制度の候補となる
29万5027人(有権者約350人に1人)の人に
最高裁が通知の発送を始めたということだ。


===========================
あなたも裁判員候補者に!どうする?
           アスパラアンケート実施のご案内

 来年5月に、市民が刑事裁判に参加する「裁判員制度」が始まります。
・・・・・・・ もし、あなたが裁判員になったら、どうしますか。
=========================== 


とりあえず、6時すぎに、アンケートに答えて、
裁判員制度の問題点を指摘した、昨日の中日新聞の
「性差別の理解少なく」「女性に冷たい」裁判員制度の記事を紹介したい。



【特報】裁判員制度 女性に冷たい
性犯罪、家庭内暴力 対象の20%以上
性差別の理解少なく/配慮なき尋問 被害者追い詰め
 

裁判員制度をめぐる議論で素通りされた課題がある。レイプなど性にまつわる犯罪だ。泣き寝入りしがちな被害たち。法廷で市民の前に姿をさらす心理的圧力や、尋問による精神的苦痛の恐れは一段と高くなる。「市民感覚」という常識も偏見をぬぐえるとは限らない。「裁判員制度が、告訴を阻害しかねない」という懸念の声ね上がっている。(田原牧)

□■被害届出せぬ 
 「法廷で一般の人たちにあれこれ聞かれると思っただけで、被害届は出しにくくなる」。自らの性犯罪被害を実名で語っている小林美佳さんは顔をしかめた。
 小林さんは8年前、男性二人組に襲われ、性的暴行を受けた。事件は未解決で時効。今年4月手記を出版し、電子メールでの相談を始めた。
 これまでセクハラ(性的嫌がらせ)含め、700人の被害者からメールが来た。迷う相談者には、他の被害者の体験も含め警察や裁判所の対応をありのまま伝えている。・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・

□■課題に上らず 
 裁判員制度の対象犯罪には通常強姦は含まれない。だが、強姦致死傷や強制わいせつ致死傷などは入る。昨年事件数に当てはめると別表のとおり、扱う事件の20.3%が対象で、家庭内暴力(DV)絡みの事件を足せば、それ以上になる。しかし、裁判員制度をめぐる法曹界の議論で、性犯罪被害者やDV殺人では加害者になりうる女性への配慮が課題に上ったことはなかった。・・・・・(略)・・・・・・・・・・


□■男女比は無視 
・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・ だが、そんな原田弁護士でも『弁護士の間ではジェンダーを意識する人はまれだし、いまは裁判員制度への実務の準備で手いっぱい」という。
 「実際、法曹界も裁判員のジェンダー構成(男女のバランス)を無視したし、乳児や幼児を抱える保護者の参加についても、託児施設を準備するより辞退の理由としてしまった。女性の人権への配慮という観点がまるで抜けている」
 現状でも女性への偏見が横行する法廷。偏見に無自覚な「世間常識」の重石が加わることで、性犯罪被害者の人権が押しつぶされかねない--当事者や支援者たちはそんな不安を募らせている。
(中日新聞 2008年11月27日)
 

中日記事にのっている小林さんの本は、9月にわたしのブログでも紹介した。

 「少女売買」(長谷川まり子著)に新潮ドキュメント賞/
『性犯罪被害にあうということ』(小林美佳)2008-09-03


わたしは死刑制度に反対だし(死刑判決を出したくない)、
人をさばくことを国から押し付けられたくない、ので
万一、裁判員の通知が届いても辞退しようと思っていたが、
辞退する女性が増えて、「フツーの市民感覚」のオジサンばかりが、
性犯罪を「裁く」ことになったら・・・ということも考えさせられた。

人気ブログランキング(社会・経済)に参加中 
応援クリックしてね
 


けさの毎日新聞を読むと、
当初いわれていたより「辞退できるケース」は意外に多い。

始まる裁判員制度:候補者通知、きょう発送 
参加意識の高まり、課題

 ◇辞退、柔軟に認める方針
 来年5月21日の裁判員制度スタートまであと半年。最高裁は28日、来年の裁判員候補者29万5027人に通知を一斉発送し、市民の司法参加を実現する新制度が事実上動き出す。しかし、国民の参加意識が高まっているとは言えない。最高裁はPRの一方で、辞退を柔軟に認める方針を示し、国民の不安解消に躍起になっている。【北村和巳】

 ■根強い負担感
 「裁判員制度、始まるみたい」。最高裁は今月10日から初のテレビCMを流し始めた。制度が始まる現実感を持ってもらうのが狙いだ。
 日本司法支援センター(法テラス)への制度に関する問い合わせも、4~9月の月平均80件から10月は132件、11月は22日までで758件と急増している。しかし、最高裁が4月に公表した国民の意識調査では、制度への抵抗感は大きい。「選ばれれば参加する」と回答したのは6割だが、うち4分の3は「あまり参加したくない」と消極派だった。この傾向は現在も変わっていないとみられる。
 裁判員の負担に対する不満も根強い。各地の模擬裁判では参加者から「残業や休日出勤で仕事を片づけ参加した」(兵庫)などの声が上がった。こうした声を受け最高裁は、参加困難な時期や辞退を柔軟に認める意向だ。

 ■地域事情も考慮 
 候補者通知が届くのは有権者の352人に1人。各地裁は事件ごとに、名簿の中から50~100人を抽選して呼び出し状を送付。初公判当日に出向いた人の中から6人の裁判員を選ぶことになる。
 候補者通知には調査票が同封され、(1)70歳以上や学生、重病などで辞退を希望するか(2)仕事や行事などで裁判員になるのが難しい月(2カ月まで)--を尋ねる。候補者の事情を把握し、裁判所への無理な呼び出しを避けるためだ。
 また、辞退許可の判断に役立てようと、各地の地裁は地域特有の産業や行事、交通事情の調査を進める。
 東京地裁の裁判官は伊豆大島や八丈島を訪問し島民の要望を聞いた。全国の裁判官が訪問した企業や団体は約1万。管轄エリアが全国で最も広い釧路地裁は午後からの選任手続きを検討している。ただ、景気後退で中小企業の経営に影響が出始めるなど国民生活は変化し、裁判所は、公平な裁判員選任と辞退許可の兼ね合いに悩む。25日に就任した竹崎博允(ひろのぶ)最高裁長官は「裁判員が参加しやすい状況を整えるため、候補者の都合を柔軟に判断し負担を軽減する」と話した。
 四宮啓・早稲田大法科大学院教授は「自分の問題にならなければ意識が高まらないのはある程度仕方ない。模擬裁判に裁判員役で参加した人に、経験や感想を積極的に語ってもらうのが効果的ではないか」と話す。
==============
 ■裁判員を辞退できる場合は?■
 <法律で裁判員になれない>
国会議員▽裁判官▽検察官▽弁護士▽警察官▽法律学の教授▽知事と市区町村長▽自衛官--など

▽禁固以上の刑に処せられた人
▽被告や被害者の親族
 <1年を通じて辞退できる>
▽70歳以上▽学生▽過去5年以内に検察審査員を務めた▽重い病気やけが
 <一定期間、辞退できる>
▽会期中の地方議員▽妊娠中や出産後8週間以内▽重い病気やけが、出産の親族の付き添い▽同居親族の介護や育児▽父母の葬式▽親族の結婚式
 <辞退が認められる可能性あり>
▽積雪により移動が困難
▽株主総会時の経営者
▽卒業・入学式シーズンの美容師
▽水産業の種付け、農家の収穫
▽代わる人がいない海外出張や接待
▽インフルエンザ流行時の医師
▽仕込み時期の杜氏(とうじ)
▽アルバイトで対応できない専門職
▽受験期に入試指導に当たる教師
▽子供が受験直前の主婦
▽人を裁くことが心のバランスを崩す
(毎日新聞 2008年11月28日)


中日新聞は社説で、裁判員制度自体の問題点も指摘している。

【社説】裁判員制度 「不安」ぬぐう努力を
中日新聞 2008年11月28日

 裁判員候補となった人への通知が二十八日から始まる。制度スタートまであと半年だ。国民の間に漂う不安感をぬぐうため、法曹界は理解を得る工夫と努力を重ね、万全の準備で臨んでほしい。
 裁判員の候補者として名簿に登録された人は、全国で約二十九万五千人だ。有権者の約三百五十人に一人の割合になる。通知を受けた人は、制度がいよいよ始まる実感を持つはずである。
 法律の専門家だけに委ねられてきた刑事裁判に、一般市民が直接、携わることになる劇的な改革だ。選挙で一票を投じ、民意を反映できる立法、行政と異なり、司法は「お上任せ」の世界だったといえる。市民参加のインパクトは大きいはずだ。
 先進各国でも陪審制や参審制が取り入れられ、定着している。日本独自の裁判員制度も、主権者たる国民自ら民主主義を実践する場として育つことを願いたい。
 しかし、新制度だけに国民が不安や重圧感などを感じるのも、無理からぬものがある。時間もとられ、労力も要する。評議の内容も口外できない。負担が軽いとはいえないのは確かだ。そうした意識に根差した、消極的な声も多いことだろう。
 候補者通知には、裁判員を辞退できる事由や、辞退希望の有無と理由を問う調査票も付される。七十歳以上の人や学生、重い病気の人などは、辞退できる。また介護や出産など、裁判員となることが難しい時期もあろう。調査票にはそれを記載することも可能だ。
 来年五月二十一日のスタートに向け、最高裁は国民の不安を少しでも和らげ、負担軽減になる工夫と努力を重ねるべきだ。開始時には混乱も予想される。見直しを要する点も探りつつ、スムーズに裁判を進める研究も深めてほしい。
 われわれ自身も、制度を育てる前向きな気概を持ちたい。法律のプロたる裁判官三人に、さらに市民六人が加わるのである。
 検察官の立証に疑わしい点はないか。市民の常識が健全に反映される法廷へと変わってほしい。
 これまでの刑事裁判に問題がないとはいえない。とくに自白偏重の捜査手法は、数々の冤罪(えんざい)を生んできた。取り調べ過程を明らかにする可視化の取り組みも不十分だ。「人質司法」と呼ばれる刑事施設での長い拘置なども問題だ。
 市民参加によって、司法の問題点を国民が共有し、改善に向かうことも期待されよう。
(中日新聞 2008年11月28日)
 

新聞各紙で、以前から指摘されたいた課題や問題点も、ほとんど解決されていない。
 
裁判員制度 あと1年、不安どう除く 
信濃毎日新聞 2008年5月25日(日)

 一般市民が刑事裁判に参加する裁判員制度のスタートまで1年を切った。
 最高裁は、裁判員の選任の仕方や審理の進め方など、市民の負担を軽減し、参加しやすくする目的で準備を進めている。
 ところが、制度開始が間近に迫るにつれ、素人が死刑という「究極の刑罰」を他人に科すことができるのか、といった制度の本質にかかわる問題がクローズアップされるようになってきた。
 市民の参加意欲は依然として高いとはいえない。課題が多すぎるからだ。残された時間の中で、これらの問題とどう向き合い、市民の視点でどこまで解決できるかが、法曹三者に問われている。

 <死刑判決の重み> 
 この4月、裁判員制度に影響を及ぼす判決が続いた。
 山口県光市の母子殺害事件の差し戻し控訴審判決と、東京都渋谷区の夫殺害・切断事件の東京地裁判決である。いずれも犯行の残虐さなどから大きな関心を集めた裁判だ。
 母子殺害事件で、広島高裁は犯行時18歳1カ月だった元少年に対し、死刑を言い渡した。裁判の最大のポイントは、18歳未満には適用されない死刑を、犯罪の中身と照らし合わせ、18歳を少し過ぎたばかりの被告に適用するかどうかだった。
 ニュースを読んだり見たりして感想を言うのと、量刑の判断をするのとでは意味が違う。犯行時、被告が少年だったということも含め、極刑を下す重みについて考えた人は多かったのではないか。
 もう一つの夫殺害・切断事件の裁判は、責任能力のない「心神喪失」と診断した精神鑑定の評価が焦点となった。
 判決は、精神鑑定の結果は信用できるとしながらも、責任能力は完全に認められるとして、被告に懲役15年を言い渡した。素人には分かりにくい判決で、責任能力の判断や鑑定の評価の難しさをあらためて印象付けた。
 殺人事件の場合、責任能力の有無は、量刑判断と切っても切れない関係にある。2つの裁判によって示された課題は、裁判員制度にとって重い意味を持つ。
 全国で一般の人が参加する模擬裁判が開かれている。裁判員制度に備えるためだが、最高裁は、死刑を求刑したり、判決として出したりする模擬裁判を行う予定はない、としている。
 手続き面の検証が主な目的で、裁判員の心理的負担については検証するのが難しい、との理由だ。

  <積極的な検証を> 
 確かに実際の裁判ではないため検証は難しい。ならばなおのこと心理的な影響について、制度が始まる前に何らかの形で、専門家による検証作業をするべきだ。
 遺族らの感情を重視した厳罰化の傾向が進み、死刑判決が増える傾向にあるといわれている。裁判員に選ばれた市民が「無期懲役か、死刑か」という究極の判断を求められるケースが増え、心理的な負担に耐えきれない人が出ることも、現実問題としてあり得ると考えなくてはならない。
 最近の世論調査を見ると、裁判員制度への参加に腰が引けている人は相変わらず多い。“消極派”と呼べる人たちが7-8割にも上っている。こうした人たちが一番感じているのが他人を裁くことに対する強い不安である。
 こうした不安がある上に、実際の審理の中で、遺体の解剖写真や残酷な犯行場面の再現などを見たり聞いたりすれば、心に傷を受ける可能性もある。
 最高裁は、最近になって審理で精神的ショックを受けた裁判員を対象に、相談窓口など支援態勢を整える方針を固めた。
 最高裁は、実施への段取りを急ぐあまり、肝心な問題を後回しにしてこなかったか。そんな疑問を感じざるを得ない。
 課題山積の中、市民への負担という面では守秘義務の問題も無視できない。
 裁判員の守秘義務は一生続く。場合によっては市民が秘密漏示罪に問われることもある。裁判員を務めた感想は話してもいいとされているが、どこまで話していいのかという分かりやすい基準は示されていない。これでは不安が高まるばかりだ。

  <原点に戻って> 
 ことし5月2日、裁判員制度に反対する法律家や市民の2団体が東京都内で相次いで記者会見を開き、廃止を訴えた。
 元裁判官や元検事、弁護士らでつくる「裁判員法の廃止を求める会」は「参加を義務付けた制度は基本的人権を侵害している」などと指摘している。
 法曹三者は、この機会に裁判員制度をなぜ導入するのか、という原点に立ち返るべきだ。
 最大の目的は「開かれた司法」にすることである。市民が前向きになれないようでは目的は達成できない。反対運動が起きている現状をしっかり受け止め、市民の声に耳を傾け、不安解消に努めなくては成功はおぼつかない。
(信濃毎日新聞 2008年5月25日)
 

ここへ来て「裁判員制度は廃止」の声が大きくなってきた。
ほんとに司法の独立性を確保できて、よりよい制度なのか?
ひとがひとを「正しく」裁くことができるのか?
裁判員制度は、わたしも
積み残しの課題山積のままの、見切り発車のような気がする。

法によって「人を裁き」「人を殺せ」と強制する「現代版赤紙」が届いたら、
「拒否(従わない)」するか「制度のなかに入って変える」努力をするか、
わたしの答えはまだ出ていない。


写真をクリックすると拡大。その右下のマークをクリックするとさらに拡大
最後まで読んでくださってありがとう
「一期一会」にクリックを 
 明日もまた見に来てね
  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする