諏訪大社には 上社 前宮本宮と 下社 春宮秋宮の四つのお宮があります。前回元宮の参拝から行きたい行きたいと思っていた前宮は本宮のほんの目の先にお在しました。石の鳥居をくぐると左手に十間廊(じっけんろう)、最初見たとき神楽殿かと思いましたが この十間廊で神事が執り行われ、現在でも「御頭祭」に代表される諏訪社固有の神事は、本宮ではなくこの十間廊で執り行われます。
また すべての貢物が この十間廊に奉納され 大祝(おおほうり)の見分を受けたといいます。明治以前 大祝がご神体 あらひとかみでした。奈良の大神神社の三輪山をはじめ 山がご神体であることが多いのですが 諏訪神社の特殊性がこれひとつを見てもわかります。前宮はこの大祝の居宅でありました。そのほかに神降ろしのためのシャーマンがいたといわれます。シャーマンに選ばれるのは少年で 一年後任期が終わると殺されたそうです。
諏訪の神は 古くはミシャグチ(石の神)でした。やがて守屋氏がミシャグチ神を統率し? つぎに出雲を追われた建御名方神がやってきて大祝となり守屋氏は大祝に仕える神長官となり共存しました。このような三層構造になっているうえに 下社春宮・秋宮は大和朝廷が出雲神建御名方を封印する、見張るためにこの地に置かれたととることもできます。春宮・秋宮に祭られているのが農耕神としての諏訪明神であることも 石神 古代神とは相いれないものを感じるのです。前宮・本宮と春宮・秋宮はまったく別の雰囲気を持っています。
さて わたしの信じるものは自らの感覚 直感でしかありません。もとはといえば筑波神社からはじまったのでした。女体山からと思える強い悲哀の波動 新緑のお山が 一瞬のうちに灰色の溶岩の山に見えたこと、そして出雲大社ご参拝のとき感じた 心臓が止まるかと思えるほどの強烈な波動 ..... それらのことが 日本の古代 日本の神 日本のなりたち わたしたちのルーツを知りたいという気持ちに火をつけたのです。
十間廊から100Mほどゆるやかにのぼると そこが前宮です。 清冽な気はたしかにすばらしい.....けれども御やしろにご参拝しても とくに感じない ...... 元宮参拝のときは地の底から突き上げるような気配があったものですから すこし拍子抜けしました。むしろ 御柱の前の木と 水眼 すいが と呼ばれる 水流がなにかを語っていました。わたしはしばらく 木の前に立ちすくんでいました。そこから見える御やしろの奥にぐっと惹かれるものを感じたのですが 夫が下の駐車場に待っていたので後ろ髪をひかれながら帰りました。帰る道すがら十間廊と鳥居のあいだの空間につよいものを感じました。石の祠がいくつかありましたからそこからくるのかもしれません。
前宮を参拝して感じたのは なにか腑に落ちない......釈然としない感じでした。春宮・秋宮対前宮・本宮 という構図だけではなく 前宮のなかに異質な存在が並立してある感じがします。
そしてもうひとつのポイントは”水”........
弐度参度の参拝ではとりつくしまもない謎が 諏訪にはあります。