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不利益な処分への審査請求 (地方公務員)

2021年04月19日 | 地方自治体と法律
(地方公務員法の審査請求の制度)
職員が、自治体からなされた処分に対して審査請求できる場合があります。地方公務員法には、「懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分」を受けた職員は、人事委員会又は公平委員会に対して審査請求をすることができると規定されています(同法49条の2)。
審査請求できるのは、ここにいう「不利益な処分」だけで、それ以外の処分については審査請求はできません。
 審査請求は、民間にはない制度で、人事委員会又は公平委員会に対して審査請求できるというのは、地方公務員独特のものです。

(審査請求の利用)
 審査請求ができるのは、「不利益な処分」に対してです。これには、懲戒処分、分限処分が含まれます。懲戒処分や分限処分をされたけれども、どうにも納得が行かないという場合は、審査請求を利用して、不服申立てをすればよいのです。
 高松高裁平成20・9・30(判時2031・44)の事案では、配置転換について審査請求がなされ、人事委員会で認められています。
 事案としては以下のようなものです。
 偽造領収書の作成を手段とした県警察における捜査費等不正支出問題について、同警察警察官が記者会見を行い、県警は同警察官を地域課鉄道警察隊(第2小隊分隊長)から地域課通信指令室(企画主任)に配置換えを行いました。この配置換えに対して、同警察官が県人事委員会に不服申立て、同委員会は、配置転換について、「不利益な処分」に該当し、本件配置換えに至る経緯の不当性、本件配置換えの必要性の不存在等を勘案して、本件配置換えは人事権の濫用であり、配置換えを取消しました。

(水平異動は審査請求利用不可)
 一方、転任処分であっても、不利益を伴わない水平異動の場合は、「不利益な処分」に該当せず、審査請求は認められません。最高裁昭61年10月23日判決(判タ627・94)は、「市立中学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に補する旨の転任処分を受けた場合において、当該処分がその身分、俸給等に異動を生ぜしめず、客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものでないときは、他に特段の事情がない限り、当該教諭は転任処分の取消しを求める訴えの利益を有しない」旨判示しています。

(審査請求の件数)
 審査請求の件数は公表されており、千葉県ですと、人事委員会年報に毎年審査請求に関する統計が掲載されています。
 平成29年度〜令和元年度ですと、申立件数は0〜2件という件数で、審査請求の件数ってほとんどないんですねという感じなのですが、年度末の未処理件数が毎年60件くらいあります。これって長期未済案件があるのではないのかと思われるのですね。平成28年度末〜平成30年度末の未処理件数は60件前後で、その間の申立件数が0〜2件なんですから。

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