(はじめに)
離婚に伴って夫婦の財産関係を精算するのが財産分与ですが、不動産があるとややこしくなる場合があります。住宅がオーバーローン状態の場合もその一つです。
(オーバーローン状態の住宅とは)
住宅ローンを利用して不動産を購入し、ほどなくして離婚ということになると、オーバローンということがほとんどです。
例えば、不動産を売ると2000万円にしかならないのに、住宅ローンとしては3000万円残っているという場合です。このように、住宅ローンの方が不動産の時価よりも上回る(オーバー)場合をオーバーローン状態といいます。
(オーバーローンの住宅は財産分与の対象にならない)
オーバーローンの住宅は財産分与の対象にならない、またオーバーしたローン部分は財産分与で考慮しないというのが、今の裁判官の考えです(「財産分与と債務」(松谷判事;判例タイムズ1269号)。
具体的に考えてみましょう。
先ほどの例で考えてみます。不動産の時価は2000万円で住宅ローンは3000万円でした。
離婚の財産分与では、この不動産の価値を次のように考えます。
2000万ー3000万
=ー1000万円
⇒0円
計算するとマイナスになりますが(だからこそオーバーローンというのですが)、マイナス部分は考慮に入れないということになっています。
財産分与の対象にならないということは、判決になった場合は、住宅は財産分与でカウントされず、もとの名義のままということになります。
(住宅の問題は先送りされるだけ)
もとの名義のままということは、住宅については問題が先送りにされるだけです。住宅ローンは誰かが支払っていかなければならないけれども、売るに売れない状態です。オーバーローン状態でも、売却することは法律上は可能ですが、売却金額で支払いきれないローン部分は一括での支払いを求められることになり、マイナス部分が顕在化してしまうからです。
不動産も住宅ローンもどちらか一方の名義であれば、他方の配偶者はこの問題にタッチしなくて済みますが、共有名義だった場合、住宅ローンの連帯債務者や連帯保証人になっている場合については問題は大きいです。
(ではどうするべきか)
オーバーローンの住宅の問題が残っても、とにかく離婚を急ぎたいという場合は、問題を切り離すという選択肢もありです。
しかし、そのような問題を残したくないというのであれば、離婚の話合いの中でオーバーローンの住宅をどのようにするのかということも話合っておいた方がよいです。
そうでないと、離婚が成立した後も話合いを続けなければならないことになってしまうからです。
数字的にはマイナスの価値しかないものをどのように決めていくかは、困難を伴うものですが、夫婦で決めたことの後始末としては必要なことと考えるほかありません。