南斗屋のブログ

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不倫をしている地方公務員を懲戒にできるか

2021年07月01日 | 地方自治体と法律
<はじめに>
 離婚関係の相談の中には、「配偶者が不倫している。配偶者は、地方公務員として勤務しているのだが、勤務先に配偶者が不倫していることを話して、懲戒処分にしてもらいたいが、そういうことはできるのか。」というものがあります。不倫をしている地方公務員は懲戒されるのでしょうか。

<地方公務員の懲戒の要件と不倫>
 地方公務員法では、懲戒の要件について次のように規定しています。
①地方公務員法やこれに基づく自治体の条例、規則または規程違反
②職務上の義務違反、又は職務怠慢
③全体の奉仕者たるにふさわしくない非行を行ったこと
 では、不倫は①~③にあたるでしょうか。
①・・・地方公務員法や条例、規則または規程には、「不倫をしてはいけない」と書かれてはいません。よって、①の要件にはあたりません。
②・・・不倫しないことが職務上の義務であるという規定もないようです。よって、②の要件にもあたりません。
③・・・「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」とは抽象的な言葉ですが、不倫がこれに当たるでしょうか。
 考え方としては分かれそうです。「不倫はけしからんし、全体の奉仕者たるにふさわしくない」と考えることもできそうですし、また、「不倫は悪いことは悪いことだけど、地方公務員の職務とは直接は関係ないのではないか。プライベートなことだから、懲戒処分までするのは行き過ぎではないか」と考えることもできそうです。
 懲戒されそうな立場の人からすると、こんな抽象的な言葉で何でもかんでも懲戒されてはたまりませんし、懲戒する側の立場から見ても、こんな抽象的な文言だけで判断してくださいといわれても困ってしまいます。
<懲戒処分の基準に関する規程>
 そこで、処分の基準を定めておくことが大事になってきます。
 自治体では、そのような基準をちゃんと定めているところが多く、「懲戒処分の基準に関する規程」というようなものがあります。懲戒にあたる行為とはどのようなものか、どの程度の懲戒処分になるかは地方公務員法より詳しく書かれています(自治体ごとに異なる可能性があります)。
 イメージをつかんでいただくために、欠勤を例にしてみると、ある自治体では、
ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた場合⇒戒告又は減給
イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた場合⇒減給又は停職
ウ 正当な理由なく21日以上勤務を欠いた場合⇒停職又は免職
と書かれています。
 では、不倫(不貞行為)について、規程ではどうなっているのかというと、通常は、不倫とか不貞という言葉は見当たりません。そうしますと、不倫をしたからといって、それだけでは懲戒処分にはならなさそうです。
 もっとも、不倫が契機となってトラブルが生じていれば、そのトラブルの内容次第では懲戒に該当する事由が生じる場合があります。
 例えば、不倫相手にあうために、病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をしたというような場合は、「休暇の虚偽申請」にあたります。また、不倫相手に会うために、勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り公務の運営に支障を生じさせたというような場合は、「勤務態度不良」にあたります。

<まとめ>
 不倫自体は懲戒処分対象になりませんが、それが具体的に職務に影響を与えれば、懲戒処分になりうるといえます。なお、これはあくまでも、懲戒という行政処分についての話であり、別途民事責任に問われる可能性があります(配偶者との関係では離婚原因になりますし、不倫相手が結婚していれば、その配偶者から損害賠償請求されます)。
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