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検察審査会〜検察官の不起訴処分への不服申立手段

2021年07月08日 | 刑事関係の話題
(検察官の不起訴処分への不服申立手段)
 検察官は、被疑者を起訴する権限があり、起訴・不起訴を決定します。
 検察官は、以下のような場合に不起訴処分とします。
・事件の嫌疑が認められない、又は、起訴をして裁判をしても有罪にもちこめる証拠がない
・有罪にする証拠は十分であるが、微罪であり起訴して有罪判決等をとるまでもない(起訴猶予)
 このような不起訴処分に対しては、検察審査会に申し立てをするという不服申立て手段があります。

(検察審査会とは)
 検察審査会は、一般人11名で構成される議決機関です。検察審査会のメンバーは一般人から抽選で選ばれ、審査は非公開です。
「検察審査会」とあることから、検察庁に置かれていると思われる方が多いのですが、検察を「審査する」、つまり検察とは一線を画すことが必要なため、裁判所に置かれています。
 ですので、申立ては、裁判所の検察審査会の窓口にします。
 どこの裁判所に行ってもよいわけではなく、不起訴処分をした検察庁に対応する裁判所に提出することになっています。
 例えば、千葉地検の検察官が不起訴処分をしたときは、千葉地検に対応する裁判所は、千葉地方裁判所なので、同裁判所の検察審査会に申し立てをすることになります。

(検察審査会への申立てができる方)
 検察官の不起訴処分は、被害者にはマイナス方向なのですが、被害者(犯罪により害を被つた者)は検察審査会への申立てができます。
 被害者が死亡した事件では、遺族(配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)が申立てができます。
 そのほか、事件について、告訴や告発をした者等も申立てができます(以上、検察審査会法2条2項)。

(申立て方法)
 申立てには、検察官がその事件について不起訴処分をしたことを証する書面(これは検察庁で発行してもらえます)と検察審査会への申立書を提出すればよいことになっています。これだけであれば、申立書さえ書くことができればよいので、それほど難しくはありません。
 もっとも、不起訴処分を覆すために、証拠を添付したり、説得的な主張をしたいという場合がありえます。
 検察官が一旦行った不起訴処分を覆すのは、なかなか難しいのが現状ですので、できれば追加の証拠や、主張を行った方がよいといえるでしょう。
 こうなりますと、弁護士と相談したり等して進めた方がよい場合があります。
同じ事件については1回しか、検察審査会に申し立てができません(一時不再理の原則;検察審査会法32条)。検察審査会は1回勝負なのです。
 よって、申立ては慎重な準備の上で行った方がよいことになります。

(検察審査会の決定の種類) 
 検察審査会の決定には、以下のものがあります。言葉が似ているので、少しややこしいのですが、次のようなものです(検察審査会法39条の5)。
 ①不起訴相当・・・不起訴が妥当だということで、検察官の判断を検察審査会も認めたということです
 ②不起訴不当・・・不起訴は不当であり、検察官の判断を認めない場合です。
 ③起訴相当・・・不起訴は不当であるだけでなく、起訴が相当であるという、不起訴不当よりもさらに強い意見です。
 ①と②は、審査員の過半数で決めます(検察審査会法27条)。
 検察官の不起訴の判断について賛成の者が多い場合は、不起訴相当(①)。
 検察官の不起訴の判断について反対で、起訴すべきだという者が多い場合は、不起訴不当(②)となります。
 起訴相当(③)となるのは、審査員11名のうち8名以上が起訴すべきだという意見の場合です(検察審査会法39条の5第2項)。

(検察官の対応等)
 不起訴相当(①)の場合は、検察官の不起訴の判断が認められたのですから、検察官は何もする必要はありません。
 不起訴不当(②)及び起訴相当(③)の場合は、起訴すべきだという意見が審査員の過半数に達しているので、検察官はこれに対して議決を参考にして、改めて事件を見直し、起訴をするのか否かを検討することになります。
 検察官が判断を見直して、起訴となれば、通常の起訴と同じように、被告人に対して刑事裁判が進行することになります。
 検察官が従前の不起訴処分の判断を見直さず、改めて不起訴処分をするということも実際には多いのです。
 起訴相当(③)の場合は、再度検察審査会に審査の場が移り、検察審査会は起訴議決をすることが可能です(検察審査会法41条の6)。

(起訴議決は2009年からの制度です)
 最後に説明した起訴議決は、2009年に改正法が施行されて可能となりました(施行期日は2009年5月21日で裁判員裁判の開始と同じ日です)。
 それ以前は、起訴相当(③)の議決があっても、検察官は法的に拘束されず、検察官の裁量に任されており、検察審査会が起訴が相当であるといっても、検察官が起訴しないことはあり、そうなってしまうともう起訴の手段は存在しないという時代がありました。
 2009年以降は、検察審査会の起訴議決により、強制的に起訴がされる制度が設けられることになりました。

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