南斗屋のブログ

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大阪高裁の高次脳機能障害認定方法

2009年06月01日 | 高次脳機能障害
 前回、大阪高裁平成21年3月26日判決を簡単に紹介しましたが、今回は、もう少し判決の内容について紹介します。
 
 自賠責の診断基準では、CT又はMRIでの画像所見がないと、頭部外傷による高次脳機能障害という認定はしません。

 問題は、この自賠の基準を裁判所が認めるのか、それともこの基準とは別の判断をするのかです。

 この点について、大阪高裁は、自賠責の診断基準とは別の判断方法をとることとしました。
 具体的にはこのように判断しています。
「局在性損傷のないびまん性軸策損傷のみの脳外傷については、CTやMRIの画像所見では発見しにくく、画像診断において見落とされる可能性が高いとする趣旨の文献がある」
から、
「現在の画像診断技術で異常を発見できない場合に、外傷による脳の器質的損傷が存在しないと断定することはできない。」

 しかし、自賠責の認定方法が間違いだとしているわけではありません。
 大阪高裁判決は、「自賠責保険における一律的、画一的な高次脳機能障害の認定においては、客観的な基準を重視し、異常所見を必要とすることは有効である」と述べており、自賠責保険の基準の有効性は認めつつ、裁判所の判断は別であると述べているからです。

 それでは、どのように高次脳機能障害を判断するのかですが、同判決は、
「画像所見に基づく医学検査の結果をひとつの要素としつつも、事故態様、本件事故前と本件事故後の状況の比較などを総合的に考慮して判断すべきである」
としています。

 考慮する要素として、
 ・医学検査の結果
 ・事故態様及び本件事故後の被害者の治療状況
 ・本件事故前と本件事故後の状況の比較
を検討し、その上で総合的な判断をするということです。

 これだけ読んだだけでは、わかったようなわからないような気がします。
 これは、「総合的判断」という言葉が、基準の明確性を犠牲にしているからです。

 ただ、基準の明確性にこだわるあまりに医学上も高次脳機能障害と認められるものを排除するのは本末転倒でしょう。

 大阪高裁の判断は、基準の明確性をある程度犠牲にしつつも総合的な判断をして、高次脳機能障害を認定しようとするものといえます。

 
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