テレビで観た。
主人公のポッポちゃんは多部未華子だ。
鎌倉が舞台であることが見ようと思ったきっかけだ。
鎌倉については昔から気になっていた。
19歳の正月、鶴岡八幡宮でおみくじを引いたら「大凶」だった。こんなのあるかぁ!って思った。
それ以降、訪ねることはなかった。
それが、59歳(つまり40年を経て)になって、一人で北鎌倉駅から鶴岡八幡宮まで歩いた。目当ては「紫陽花」だったが、少し遅かったようだった。でも、鎌倉良かった。
それから次の年も紫陽花を観るためでかけた。
最近の鎌倉を舞台にした物語では「海街diary」を観た、「DESTINY 鎌倉ものがたり」の映画を観た。そして、ツバキ文具店だ。私にとっての鎌倉三部作だ。
そしてこの鎌倉三部作は、映像を見た後、原作を読んでいる。(海街diaryと鎌倉ものがたりは漫画である)私にとっては珍しいことだ。
従って、今回この本を読んだのは、テレビで観たからなのである。本年8月に文庫化されたので、待ちに待った、というカンジである。
それでもって、読むのと並行してNHKオンデマンドで映像も見ている。
で、だいぶ原作と映像は違っている。
感想としては、どちらもOKだ。映像も許す!
さて、本書は4章からなっている。「夏」「秋」「冬」「春」である。
いずれも『鎌倉の・・・』である。
主人公のポッポちゃん(雨宮鳩子)は、母を知らない。祖母に厳しく育てられた。『おばあさん』と呼んだこともない。
高校生で、反抗しガングロになり、祖母離れをする。高校卒業後、家を出て暮らし、祖母が亡くなって帰ってきた。
そして成り行き上「ツバキ文具店」を継ぎ、祖母が行っていた「代書屋」も継ぐこととなった。
この物語の面白さは3つある。
一つは「代書」
全部で9つの代書が依頼されるが、一つは断る。
理由は、代書すべき案件でなかったからだ。
「私は確かに代書屋です。頼まれれば、なんだって書く仕事をしてますよ。でも、それは困っている人を助けるためです。その人が、幸せになってほしいからです。でもあなたは、ただ甘えているだけじゃないですか。ちゃんと正面から相手と向き合ったんですか?今どき代書屋なんて時代遅れな商売ですけれどね、なめてもらっちゃ困りますよ。そうやって、今までは生きてこられたかもしれませんけど、世の中はそんなに甘くないんです!そんなの、自分で書きなさいよねっ」(★p124)
ポッポちゃんの代書にかける「思い」である。
残りの8つの代書。初めての代書は「犬がなくなった飼い主へのお悔み状」それから「離婚のお知らせ」「昔の彼女へ単に無事を伝える手紙」「借金の断り状」「絶縁状」或いは「すでに死んだ夫から認知症の妻へのラブレター」などなど。
まあ、一風変わった、手紙である。
そしてポッポちゃんは、使う筆記具、紙、そして封筒、切手まで、こだわる。
この「こだわり」は、一般常識、作法、思いやりなどなど。
これだけでも読む価値あり。
次は、祖母(ポッポちゃんは先代と呼ぶ)との確執を思い出しながら、祖母に近づいていくところである。祖母に近づくことは自分を探す旅でもある。この内省的な旅も読みごたえがある。
代書でのこだわりは、つまり祖母のこだわりでもあり、代書するということは祖母を認めていくということでもある。
3つ目は「鎌倉」が良くかけていること。鎌倉を知らない私が「良くかけている」というのもナンなのだが、鎌倉が身近に感じる。
それはポッポちゃんの友だち、バーバラ婦人、男爵、パンティー、QPちゃん、QPちゃんの父のモリカゲさん、などの登場人物たちに負うことも大きい。
また、鎌倉に行ってみようと思う。もしかしたら、街角で、ポッポちゃんやバーバラ夫人、或いは海街diaryの4姉妹、更には物の怪に遭えるかもしれない。
そのときには『ツバキ文具店の鎌倉案内』が役に立つ。
「春」の章の最後で、ポッポちゃんは先代に手紙を書く。
これが涙なしでは読めない。
ちなみに、続編の「キラキラ共和国」が出版されている。
文庫まで待つか、悩んでいる。