尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「落協レディース只今参上!」夜の部、落語はこんなに面白い

2024年02月01日 21時58分40秒 | 落語(講談・浪曲)
 1月31日夜に、新宿末廣亭の「余一会」に行った。寄席の定席は10日で番組が替わるから、大の月だと31日が余る。その日に実施するスペシャル企画が「余一会」で、ここ数年(正確には7年)1月31日は落語協会所属の女性芸人が「落協レディース」と題して女性だけの公演をしてきた。今まで日が合わなくて行ったことがなかったけど、一度行きたいなと思っていた。

 11月に短期だけど入院して、しばらく寄席や芝居は控えていた。映画に比べて拘束時間が長いから、体力的に心配なのである。まあ時間も経って、(まだ血圧も高いんだけど)そろそろ大丈夫かなと思う。ホントは昼の部の方が安心だけど、聞いてる落語家が多いので頑張って夜に行くことにした。一度も聞いてない川柳つくしは、川柳川柳の唯一の弟子だった人である。また林家つる子は3月下旬に(三遊亭わん丈とともに)抜てきで真打に昇進することが決まってる。一度も聞いてないけど、一体どんな人? 

 今回は皆が伸び伸びやっていて、ものすごく面白かった。中でも新作落語が多かったのが印象的だった。一人当たりの持ち時間も長くて存分に出来る。特に林家つる子の女子高生の噺がムチャクチャおかしくて大笑い。「ベタな展開の噺」をやりたいと作ったらしい。寝坊した女子高生がトーストを口にくわえてバス停に急ぐと、思わず誰かにぶつかってしまう。それが「不良」ですごまれるが、そこを助けてくれた「とある男子」。やっと学校へ行くと、今日から転校生が来ると言われ、それが先ほど助けてくれた男子で隣の席になる…という冒頭からアレヨアレヨの展開に呆れながら、ベタな展開に大笑い。
(林家つる子)
 今日は新宿に来る前に、池袋演芸場の余一会に出て来たという。それが「抜かれた俺たち」だと笑わせる。家で調べたら、昼はつる子、夜はわん丈がトリを務めて、その前に抜てき真打に抜かれた面々が一席行うという趣向。そっちも見てみたかった。さっきの噺は延々とありそうな展開が続くが、ところどころで予想を上回る展開が…。特に交通事故にあって病院で目覚めた後の「あなたは誰ですか?」には笑った。蝶花楼桃花に続いて林家つる子が真打に昇進して間違いなく女性落語家ブームが来るぞ。注目。
(川柳つくし)
 新作をやった人を先に書くと、トリで出て来た川柳つくし。これがまた川柳川柳の弟子になっただけのことはある変な噺でビックリ。末廣亭に来てみたら、席亭がいないじゃないか。何でも末廣亭が買収されたとか。それも何とイーロン・マスクが買ったという設定で、イーロン・マスクが落語をしちゃう。「寿限無」では「解雇、解雇、解雇のシューリンガン」と笑わせる。一体どんなオチになるんだと思うと、これがSF系になったので驚いた。一番最後に三味線の立花家あまねと一緒に「つくね」と名乗り、歌を披露した。つくしはウナギの歌なんか披露して笑った。クリスマスや正月と違って、「土用の丑の日」は歌がないから作ったとか。
 
 いつもは立花家橘之助と組んでやってる弟子のあまねも、今日は一人でやってた。最後はギターまで披露して「ルージュの伝言」を歌った。どんどん寄席になじんでる。ラストのラストで全員が登壇して、あまねの弾く「おてもやん」に合わせて一人ずつ歌ったのが珍しかった。あまねがやってると、まだ初々しいから場が和むんだよね。
(立花家あまね)
 二つ目の林家きよ彦は北海道で社会福祉士で働いた後で、28歳になって林家彦いちに入門したという変わり種。名前が男性風だが、女性の噺家。田嶋陽子だと言ってたけど、確かに似てるな。新作中心らしく、今回も未だに「平成」を使ってるというへき地の孤島に政府の視察が来ることになり、いよいよ「令和」にするしかない。ということで村人が集まって、「令和」の勉強会を開催する。消費税を10%にするんだとか、「大変です。令和には新選組がいることがわかりました」とか、未だに女子高生がルーズソックス履いてた島が大揺れするという超バカバカしい噺。面白かったので注目だ。
(林家きよ彦)
 最初に二つ目の中でも若い金原亭杏寿古今亭雛菊が出て来た。杏寿は2023年2月に二つ目になったばかり。沖縄出身でタレント活動をした後で、金原亭世之介に入門した。夜の部は「縁起がいい噺」特集で、「ざるや」という「上げる」という言葉を使うと縁起が良いと祝儀をくれるという噺。雛菊は古今亭菊之丞の弟子で、2022年に二つ目昇進。吉原をひやかして歩くことが大好きな若旦那。心配した番頭が自宅の二階に吉原を再現する「ひやかし」。二人とも「先物買い」のファンが付いてるようです。
(金原亭杏寿)(古今亭雛菊)
 今女性の前座がいないということで、前座がやる座布団返しなどを大御所がやってたのもおかしかった。全員細かく書いても長くなるので、後は簡単に。林家あんこは落語家林家時蔵の娘で、女性初の二世落語家。林家しん平に弟子入りしたという人である。噺は尾頭付きを買ってきてと妻に言われて、鮑を買ってきてしまう男。それをもって大家を訪ねるがという「鮑のし」。他にも蝶花楼桃花はへまな空き巣の噺。大御所三遊亭歌る多が締めて、あまね、つくしで終わる。まあ二人は写真を抜くことにします。
(林家あんこ) 
 久しぶりということもあったか、とても楽しかった。終わったら全員が出て来て能登半島地震の義援金を募る。そのアナウンスでも「芸人さん本人と服装には触らないようにおねがいします」とある。これだけで受けてたから、笑う気満々の観客なのである。何でもよく受けていた。でも残念なのは、こんなに面白くて若い女性が頑張っているにの、客席は高齢男性がほとんど。まあ平日夜では働いている人には辛いけど、やはり情報が届いてないこともあるんじゃないか。3月下旬から始まる林家つる子の真打昇進披露公演には是非多くの若い人も足を運んでください。

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