尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

国立演芸場で春風亭小朝を聞く

2021年03月10日 21時06分58秒 | 落語(講談・浪曲)
 国立演芸場3月上席の千穐楽。トリは春風亭小朝である。落語協会は大御所の元会長・鈴々舎馬風や気鋭の桃月庵白酒などを中心にコロナ感染者が出て休演期間があった。落語協会だけ出演の上野・鈴本演芸場は今も休業中である。白酒は今月から復帰し、浅草演芸ホール夜の部でトリを取っている。そっちは時間的に大変だから国立演芸場に行こうと思った。ここは時間が短くなっている(1時開始で3時半上がり)。椅子も他の寄席よりいいし、国立で料金が安い。「津波の霊たち」のような本を読んでいると、重さを抜く必要がある。
(春風亭小朝)
 春風亭小朝は1980年に36人抜きで真打に昇進した。その頃は落語に関心がなかったけれど、これは大きく報道された一般ニュースだった。そして80年代、90年代には、テレビでも大活躍していた。20世紀の終わり頃から落語を聞きに行くようになって、小朝も何度か聞いている。今も大スターだけど、昔ほどの勢いがなくなった感じもある。「春風亭」と打ち込むと、一之輔昇太に次ぐ3番目で、下に昇太の弟子の昇吉、小朝の弟子の「ぴっかり☆」が迫っている。どんな大名跡を継ぐのかと期待されていた小朝も、3月上席中に誕生日が来て66歳である。

 今日はたっぷり「男の花道」を語った。これは初めてで、昔映画にも何度もなったけど、そっちも掛け違って見ていない。映画と落語、講談では少し内容が違うようだが、基本は上方の歌舞伎役者が東上する途中で失明の危機におちいる。それを東海道の宿場町に同宿していた目医者が治す。江戸で大人気を取った中村歌右衛門は、かつての恩義を忘れず医者の危機に舞台をなげうち駆けつけようと思うが…。という話で、途中少し言い間違いもあるが、長い話を聞かせた。

 前座が終わって、最初が先に名前を書いた「ぴっかり☆」。☆までが芸名である。元女優だそうで、年をごまかしてAKB48の第一期オーディションに参加して最終予選まで残ったという。最後は秋元康に年齢を見抜かれたということになっている。二つ目ながら、すでに大人気らしいが僕は初めて。演題は「やかん」という、横町の隠居先生が言葉の由来を無理やり語呂合わせするバカ話。訪ねた八五郎を先生が「愚者」「愚者」と呼ぶから、やる人によっては嫌み感が出る。アイドル系のぴっかり☆がやると、おかしさだけ伝わる感じがした。若いようでも不惑が近いけど、二つ目も10年目。そろそろ飛躍が期待できそう。
(春風亭ぴっかり☆)
 トリの前に僕のごひいきの音楽パフォーマンスのだゆき。今日は座ってやったのが珍しい。今まで何回か聞いてるが、いつも立ってやっていた。毎回鍵盤ハモニカでコンビニの音を再現するけど、それは手始め。パイプオルガンに再現には驚いた。簡単に演奏できる楽器をいくつか持ってくるが、この人はアルト・リコーダーソプラノ・リコーダーを一緒に吹ける。一人合奏で「ふるさと」を吹くんだからすごい。でも音楽だけでない雰囲気に持ち味がある。
(のだゆき、立って二つのリコーダーを一緒に吹くところ)
 前半はぴっかり☆に続き、春風亭柳朝、曲芸の翁屋勝丸林家三平で終わり。三平は「悋気の独楽」という、嫉妬深い奥さんが浮気旦那の後を小僧に付けさせる話。三平はだんだん風貌が先代に似てきたと思う。去年も浅草で聞いたけど、三平はうまくなっている。中入り後は桂文雀。この人も初めてで、調べると持ちネタがたくさんあるらしい。今日は「歯ンデレラ」という新作で、お婆さんが合コンに行って入れ歯を落とす。それを妻を亡くした社長が拾って落としたお婆さんを探すという、実におかしくも哀しいバカ話である。これは笑えた。時間が短いから疲れなくていい。でも国立演芸場はやはり「寄席」っていう感じが薄いんだなあ。
(林家三平)(桂文雀)
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