尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

ボイジャー2号、太陽系を離脱

2018年11月28日 23時14分19秒 | 社会(世の中の出来事)
 2018年秋には様々な出来事があったけれど、一番驚いたのがボイジャー2号のニュースだった。NASAが10月6日にボイジャー2号が太陽系を離脱しつつあると発表したのである。これは一体どういうことなんだろうか。その時々の天文ニュースは見ていても、専門じゃないから普段は忘れてる。そんなに詳しくないけど、ネットで簡単に調べられる範囲で見てみた。いつもとちょっとジャンルが違うけど、すごく興味深かったのでぜひ書いておきたいと思う。
 (ボイジャー2号)
 ボイジャー計画(Voyager program、ボイジャーは「旅人」「航海者」といった意味)は20世紀後半に実施された太陽系の外惑星探査計画である。今もずっと飛び続けていたんだと感心した。ボイジャー1号は1977年9月5日、ボイジャー2号は1977年8月20日に打ち上げられた。1号の方が遅いけど、本来は同日の予定でシステム不良で遅れたという。何にしても40年以上も前のことだ。

 地球は一年かけて太陽を公転している(というか話は逆で、地球の公転周期を「一年」と呼ぶ)が、他の惑星の公転周期は異なっている。太陽に近いほど公転周期が短く、水星は87日、金星は224.7日である。太陽から離れるほど公転周期は遅れて行く。火星は1.88年、木星は11.86年、土星は29.53年、天王星は84.25年、海王星になると164.79年もかかる。

 だから普通は太陽系のあっちこっちにバラバラに各惑星があるわけだ。ところが1970年代後半から1980年代にかけて、175年に一度の「外惑星がほぼ並ぶ」周期が訪れた。それを利用して、外惑星をまとめて観測しようというのがボイジャー計画だったのである。そしてボイジャー1号は1979年3月5日に木星を通過し、1980年11月12日に土星を通過した。1号のミッションはそこで終わって、すでに2012年8月25日に太陽系を離脱している。
 (ボイジャー2号が撮った土星)
 ボイジャー2号は、1979年7月9日に木星を通過し、新しい衛星アドラステアを発見した。続いて1981年8月25日に土星を通過して土星大気の分析などを行った。本来は地球を出発した速度では木星程度しか到達できない。そこで「スイングバイ航法」を用いて天王星、海王星へと向かった。この「スイングバイ」(swing-by)は日本の小惑星探査機「はやぶさ2」でも使われた技術で、天体の運動と重力を利用して運動ベクトルを変更する。僕にはどうにも説明できないけど。
 (天王星に最接近したボイジャー2号)
 ボイジャー2号は1986年1月24日に天王星を通過し、天王星の新しい衛星を10個発見した。また磁場の存在を確認し、天王星の輪を観測したりした。続いて1989年8月25日に海王星に最接近した。海王星の衛星も新しく6個発見している。また輪が海王星を一周していることも確認した。ボイジャー2号は今のところ海王星まで到達した唯一の探査機である。当時大きく報道されたは思うけど、もう30年近く前である。写真は覚えていたけど探査機の名前も忘れていた。
 (ボイジャー2号の見た海王星)
 ところで海王星を通過してずいぶん経つわけだが、今まで太陽系にいたのか。「太陽系」とは何だろうか。昔は冥王星も惑星に数えていたけど、その後除外された。地球と太陽との平均距離をもとに「天文単位」(au)が定められている(149597870700m)。海王星は約30auで、冥王星は楕円軌道なので一番短い時は海王星より地球に近いぐらいだが、地球から29auから49auぐらい。その周りに「太陽圏」(ヘリオスフィア)と呼ぶ空間がある。太陽風の届く範囲で、120auぐらい。

 海王星探査後も30年近く飛び続けて、ボイジャー2号はその太陽圏のへりまで到達したわけである。太陽風の影響はなくなり、今後は星間物質を観測する。まだ通信は途絶えていないのである。ボイジャー1号も同様で、2号ともども2025年ぐらいまでは通信可能と言われている。今後も飛んでいくが、どこか特定の恒星を目指しているわけではない。しかし計算上は、29万8000年後にシリウスから約4光年まで接近すると言うんだから、何という壮大なロマンだろうか。ボイジャーには、もしかしたらということで「55の言語でのあいさつ」などを収録したレコードが搭載されている。いつまでも宇宙空間を孤独に飛び続けて、あるいは他の生命系によって解読される日は来るのだろうか。
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