2期目のトランプ政権を考える時、「まさかそこまで」という思い込みは捨てた方が良いと思う。例えば「王冠を被ったトランプ」像がある。これは反トランプ派が「トランプは王様みたいに振る舞っている」と批判、または揶揄で作った画像ではない。なんとホワイトハウスのXに投稿(2.19)されたもので、「国王万歳!」と書かれていたという。普通の神経では考えられない。
もちろんドナルド・トランプが選挙を経ずに大統領職を世襲するシステムに変えようと企んでいる、ということはない。そういうことじゃないけれど、こういう投稿をすることは反対派には非難されるとしても、「支持者には受ける」と理解していることを示している。まさかと思うけど、トランプの肥大した自己愛は自分の写真に王冠を被らせても恥ずかしくないのである。そして2月15日には、ナポレオンのものとされる文言を引用し「国を救う者はいかなる法律も犯さない」とも投稿している。「無謬(むびゅう)の王」たるトランプは「私、失敗しないので」と認識しているから、株価がいくら下がろうがゴルフに興じていられる。
トランプ大統領は4月4日までに、国家安全保障局(NSA)と米サイバー軍を率いるティモシー・ハウ空軍将軍とウェンディー・ノーブルNSA副局長を解任した。解任理由は直前に大統領を面会した「極右活動家ローラ・ルーマー氏」という人が「トランプ大統領に不誠実だった。それが解雇理由だ」と投稿したという。米国家安全保障会議(NSC)の高官数人も解任されたと報じられていて、トランプ大統領の熱烈な支持者が「トランプ氏への忠誠が足りない」としてNSC高官の解任を求めていたという。ここで判明することは、トランプ政権では「国家への忠誠心」ではなく「トランプ個人への忠誠心」を求められるということだ。
これはアメリカが「事実上の君主制国家」に変質したことを示している。大統領は永遠に在職するわけではなく、選挙で党派も入れ替わる。官僚は大統領個人に対してではなく、「憲法秩序」に忠実であるべきというのが「民主主義国家」である。そういう当たり前の論理が通じない。一応は「選挙で選ばれた」という事実が根拠となるんだろうが、選挙で当選すれば憲法なんか自分の好きなように解釈できると思っているらしい。(トモダチだったシンゾーから教えて貰ったのかもしれない。)
こうなると一部で取り沙汰されている「3期目」も絶対にあるわけないとは断言できない。僕はそのように判断している。まさかと思うだろうが、本人が「方法はある」と言っている。アメリカ合衆国の「憲法修正22条」は明確に「何人も、2回を超えて大統領の職に選出されてはならない」と明記している。憲法改正には議会の承認後に、全州の4分の3の承認が必要である。これは2028年大統領までには不可能だと思われている。民主党の上院議員数などを考えても、4分の3という条件は厳しい。
しかし、いま「方法はある」とささやかれているのは、J・D・バンス(なり他の誰かなり)を大統領候補にして、ドナルド・トランプは副大統領候補となって、就任後に大統領が辞任して副大統領が昇格すればよいという「奇策」らしい。憲法では副大統領の条件として大統領になる資格を有しないものはなれないとしている。従って常識的には2期大統領を務めた人物はその後副大統領にはなれない。しかし、正確にそのように書かれているわけではなく、解釈上の余地があるという意見もあるらしい。
ホントにそんなことが起きるかどうかは、それはまあ確率としては少ないと思う。しかし、大真面目にそんな可能性を探ることは想定しておくべきだ。プーチンだって、習近平だってずっとやり続けているというのに、なんでオレ様が2期で辞めなくちゃいけないのか。そもそも前回の敗北を正式に承認しておらず、「民主党の不正選挙によって勝利を奪われた」と今も主張している。つまり、本来の意識では「今が3期目」なんだから、次もやっていいはずだということになる。まさか?と油断はできない。