尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

学校「休校」から「再開」へのプログラム①

2020年05月04日 20時05分22秒 |  〃 (教育行政)
 5月4日、安倍内閣は新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言を5月31日まで延長した。5月1日に「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が開かれて、「提言」を受けての決断という形を取っている。しかし、前日には自民党の二階幹事長に延長を伝えていて、野党側はやり方がおかしいと批判している。その通りだが、現実には「専門家会議」なるものは政府の追認機関でしかないのが実態だろう。

 ところでその「専門家会議」さえ開かずに、担当大臣(萩生田文科相)も納得していないのに、突然打ち出したのが2月27日の「全国の学校の一斉休校」だった。子どもの面倒をどうみるか給食業者の困惑など様々な問題が噴出したが、世論調査では支持の方が多かった。そのことが「首相の成功体験」になっているんだという。その後の「全国民マスク配布」など、側近の進言だけで突然発表していくきっかけになったらしい。ではその「全国一斉休校」は意味があったのだろうか

 専門家会議はどう評価したのか。脇田隆字国立感染症研究所長は4月2日に「(一斉休校は)国民にコロナに対する対策を呼びかけるという意味ではかなりのインパクトがあった」と述べた。これは「社会衛生的には意味はなかった」ということを婉曲に表現しているんだろう。単に「呼びかけ」でしかなかったのである。しかし、世の中には「これで子どもたちが守られた」と評価する意見もある。

 それは明らかに間違いでだ。3月初期段階では、感染者がいない地域も多かったし、特に小学生などは行動範囲が狭いから、親か教職員からしか移らない。そして、この段階では学校教職員の感染事例は起こらなかった。もう3学期も終わろうという時期だから、中高ではテストをやって、残りは学校行事が中心だ。高校ではよく「卒業遠足」として東京ディズニーランドに行ったりするが、2月末から休園したからそれは不可能。その時点ではテストなど学年末のまとめだけをやって、卒業式を除く行事は原則的に中止するよう求めれば十分だった。学校現場では誰でもそう思っていただろう。

 2月末時点で突然首相が学校休校を言い出したのは、明らかに「五輪実施」のためだっただろう。その時点では欧米のパンデミックは起こってなかったのである。その時点で取るべきだった対策は、欧米からの帰国者「一時的滞在施設」を確保にすることだった。3月末になって、日本でも急激に感染が広がったが、それは欧米由来のウイルスだったことが証明されている。その頃文科省は4月からの学校再開を目論んでいた。しかし、「緊急事態宣言」で学校は再び休校に追い込まれたわけである。

 しかし、不思議といえば不思議と言えるが、全国に緊急事態宣言が拡大された後も、全国には休校していない学校がある休校しているのが94%だというから、6%の学校は開いているのである。これは全く当然のことで、全国それぞれの地域で感染状況は異なっている。離島も山間部も一斉に休校させた2月末の要請の方がおかしかった。東京も全国で一番感染者数が多いといっても、島部(伊豆、小笠原諸島)では一人も感染者がいない。そこを休校にする意味が判らない。

 「自ら学ぶ力」と言いつつ、学校現場では「自ら考えてはいけない」のだろう。最近の新聞を見ると、新型コロナウイルスによる犯罪や自殺、倒産、失業などのニュースが目立ってきた。中には若い世代による犯罪もある。「自粛警察」などと言われる他者への攻撃も伝えられる。日本社会の中に「持ちこたえられない部署」が現れているのだ。この事態があと一月もすれば、特に子どもたちに取っては取り返しが付かないダメージになりかねない。
(文科省の学校再開方針)
 文科省でも再開方針を出した。「分散登校」として、小学校1年小学校6年中学校3年を優先するという。それは納得できるが、新しく始まる中学校1年も同様に重要だ。中高一貫校(中等教育学校)や小中一貫校(義務教育学校)も増えているが、その場合はどうするのか。高校大学には触れていないが、そっちはどうなのか。高校でも夜間定時制の場合はどうなのか。それらは細かく文科省に指示されるんじゃなくて、学校現場で知恵を出していかなければならない。
(学校再開方針を示す萩生田文科相)
 「感染者ゼロ」にならないと経済活動を再開できないとなると、多くの人の生活が破壊されてしまう。そもそも「ゼロ」を求めるのは「リスク」という概念に合致しない。仮に「感染リスクゼロ」だったとしても(それは2019年までの生活だが)、「登校中の交通事故リスク」はゼロではなかった。「いじめ」や「学校事故」のリスクがあっても学校は開いていた。そもそも人生には多くのリスクがあるものだ。4月以後、学校関係者にも何人かの感染者が出ている。しかし教員間で集団感染が発生はしなかった。その事からも学校は部分的に再開に向けて対策を講じていくべき時期だ。長くなっているのでここでは総論で切って具体論は別に書きたい。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 恐怖のエボラ出血熱ー「ホッ... | トップ | 「保健室」「図書室」の再開... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

 〃 (教育行政)」カテゴリの最新記事