尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

DIC川村記念美術館、休館前にコレクション展を見る

2024年09月09日 22時12分17秒 | アート
 千葉県佐倉市にある「DIC川村記念美術館」が2025年1月をもって休館するという。そのニュースは関東圏では報道されたので知ってる人もいるだろう。この美術館は1990年に開館していて、以前千葉方面に旅行したときに寄ったことがある。月曜じゃないから開いてると思って調べずに行ったら、たまたま展示替え休館中で見られなかった。

 DICと言われても急には判らないが、前の社名は「大日本インキ化学工業」で印刷用インキなどを手掛ける世界的な化学会社である。美術館は創業者川村喜十郎はじめ三代の社長が収集した絵画・彫刻コレクションを展示している。自社の研究所の隣にあるが、駅から遠く路線バスもない。美術館は赤字続きで、投資ファンドなどから圧力もあったらしい。
 (入口近くの彫刻)(庭の様子) 
 今回は車で行ったが、道に案内はなくてカーナビなしで行くのは大変だろう。送迎バスはかなり出ているので、それを利用する方が良いかもしれない。まだまだ暑くて周囲を散歩する気にならなかったが、大規模な庭園の中にある。レストランもあって、そこだけ利用することも可能。駐車場前にチケット販売所があり、そこからしばらく行くと北海道の牧場にあるサイロみたいな特徴的な建物が見えてくる。設計した海老原一郎憲政記念館を設計した人だという。
  
 コレクションは欧米の近現代美術史を順番に見て行く感じで、モネ睡蓮」、ルノワール水浴する女」からピカソエルンストシャガールフジタなどと続くが、代表作とは言えない既視感のある絵が多いかな。と思ったら別室にレンブラントがあった。「広つば帽を被った男」という絵である。レンブラントはフェルメールほど現存作品が少ないわけじゃないだろうが、調べてみると日本ではここにしかないらしい。展覧会で見たことはあるが、国内の美術館に収まっているとは知らなかった。これがやはり一番の見どころかと思う。皆じっくり眺めている。
(レンブラント「広つば帽を被った男」)
 そこから移っていくと現代アートが多くなる。特にアメリカの現代美術がコレクションの目玉らしいが、一見して何だか判らない作品が並んでいる。マーク・ロスコ(1903~1970)作品をズラリと並べた部屋が圧巻。まあ名前も知らないのだが。帝政ロシア支配下のラトビアのユダヤ人として生まれ、1910年にアメリカに移住した画家である。主にニューヨークで活動し、「シーグラム壁画」で知られる。これはシーグラム・ビルディングのレストランから壁画を依頼された約40枚の連作(シーグラム壁画)である。結局納入されずに終わり、没後に3つの美術館に収蔵された。ロンドン、ワシントンDCと並び、川村記念美術館がその一つである。
(ロスコ・ルーム)
 また2024年5月に亡くなった現代アメリカを代表する抽象画家、フランク・ステラもたくさん展示されている。ステラ作品の収蔵先として世界的に知られているという。様々な色彩が複雑に構成された作品ばかりで、これは80年代以後の作風だという。それ以前はミニマリストとして知られていたらしい。なかなか見ていてキレイで面白い。まあよく理解出来ないんだけど。
(ステラの作品)
 日本の作品はないのかと思うと、Wikipediaによるとかつては日本の近世絵画も多く持っていたが、収蔵方針の変更で手放したという。「重要文化財の長谷川等伯筆『烏鷺図』は実業家の前澤友作に譲渡した」と出ていた。そんなことがあったのか。今後全部売られてしまうということはないと思うが、東京への縮小移転はあり得るだろう。今回は暑すぎて園内散歩が出来なかったが、非常に大きな庭園も素晴らしい。JR佐倉駅、京成線京成佐倉駅から無料送迎バス。紅葉の時期にまた訪れてみたいと思った。佐倉には佐倉城址公園があり、日本100名城に選定されている。そこに国立歴史民俗博物館もある。ちょっと城址公園に寄ったのだが、佐倉市の南北で案外遠いので行きにくかった。
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