尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

安倍派幹部の不起訴に納得せず

2024年01月19日 22時10分37秒 | 政治
 2023年末から大きく問題になってきた「安倍派裏金問題」に取りあえずの結論が出たようだ。「証拠隠滅」疑惑もあって逮捕されている池田佳隆衆院議員の扱いが未定だが、議員としては谷川弥一衆院議員が「略式起訴」、大野泰正参院議員が「在宅起訴」された。一方、派閥側では安倍派二階派岸田派会計責任者(元会計責任者)が「在宅起訴」された。一方、安倍派幹部側は全員不起訴になった。きちんとした「証拠」が集まらないのに、無理に起訴するのは間違っている。しかし、今回のケースでは、僕は「証拠不十分」なだけで実際は「限りなく怪しいクロ」と思っている。
(安倍派幹部不起訴)
 ところで、こういうニュースを見ると、「略式起訴」の対語として「在宅起訴」があるように思う人もいるだろう。だが実は「起訴」と「略式起訴」があるだけである。「在宅」かどうかは取り調べのやり方の問題で、「逃亡」「証拠隠滅」の恐れがなければ、逮捕して取り調べる必要がない。略式起訴は最高刑が罰金100万円以下の事件で、本人が同意した場合に行われる。正式裁判は行われず、簡易裁判所で行われる。要するに谷川議員は「有罪」を受け入れ、大野議員は「有罪」を受け入れてないのだろう。大野議員は今後通常の裁判が行われ、有罪が確定するまでは議員の身分は変わらず、選挙にも出られる。谷川氏は現在82歳なので、今後数年以上も争うのは人生の時間のムダと判断したんだろう。
 (谷川議員と大野議員)
 二階派や岸田派の実情は知らないけど、「ミス」の積み重ねだと言われると、それを覆す証拠もないのかなと思う。そもそも政治資金規正法では不記載の責任は一義的には会計責任者になる。なかなか議員側との共謀関係の証明は難しいだろう。だが、安倍派のケースはずいぶん違っている(と報道されている)。一端集めたものを、ノルマ以上だと超過分を戻していたとされる。さらに参院議員の場合、参院選の年は納入義務が免除されていたとか、中には派閥にはノルマ分だけ納めて超過分はもともと手元に置いていたという。この特殊性から考えて、「4千万円基準」で起訴、不起訴が分かれること自体納得出来ない。

 事務総長経験者は「会長案件」だったと述べていると報道されている。安倍派というのは党内保守派で、折に触れ「愛国心」とか言ってきた人々である。まあ「自称愛国者」がイザとなったら責任転嫁するというのは、歴史の法則である。だがこの5年間の会長というのは、細田博之安倍晋三の二人だから、まさに「死人に口なし」ではないか。それならば2022年7月に安倍氏が亡くなった後は、この裏金問題は無くなったのか。それだけ考えても、少なくともこの2年間は「会長案件」とは言えない。統一協会の票割りは安倍氏が仕切っていたようだが、一般的には政治資金の処理は会長じゃなく事務総長の権限じゃないのか。
(二人の会長経験者は故人)
 そもそも何のために政治資金規正法があるのか。それは「お金で政治を動かす」ことがあってはならないからだ。政治に関わるお金の流れを透明にすることで、「お金で政治を買う」企業などを無くす。実際は必ずしもそうなっていないが、目的はそういうことだろう。時効に掛からない5年間で4千万というのは、1年で800万になる。それだけ貰えば、政治家を動かせそうな気もする。柿沢未途議員の「贈賄」は、選挙に関わる問題だがずっと少ないではないか。それはともかく、法の目的からするともともと「薄利多売」であるパーティー券の収支は記載ミスがあっても大きな問題になりにくい。

 しかし、今回の安倍派のケースは、「意図して裏金を作る」というものだ。それが「派閥ぐるみ」で行われていた以上、派閥幹部には責任がある。法的責任が証明出来なかったとしても、政治的、道義的責任があるのは当然ではないのか。収入に記載されてないお金は何に使ったのか。いくらでも不明朗な使い道が出来るだろう。こういう「初めから裏金目的」の場合は、何も「未記載額4千万」にこだわるのはおかしい。派閥のパーティー券を一生懸命売った人だけが、多額の未記載額が生じてバカを見た。初めからノルマ超過分を手元に置いていた人は、金額の多寡に関わらず政治資金規正法違反で立件するべきではないのか。

 しかし、まあこういう結果は当然予測の範囲内である。年末に書いた「今は安倍派の責任追求が優先だー岸田首相退陣要求の前に」でこのように指摘した。「かつて東京佐川急便事件で当時の金丸信自民党副総裁が在宅のまま略式起訴になったことに国民の批判が殺到した。その結果、本人が議員辞職するに至った。今回も刑事責任を辛くも逃れたとしても、明らかに政治責任がある政治家には議員辞職を要求していかなければならない。」僕が今思うのは、やはりそういうことである。

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